台風で欠勤控除できるか

今年も台風のシーズンがやってきました。
台風のシーズンとなり、人事労務関係者を悩ませるのが、台風による欠勤や遅刻です。

台風により、公共の交通機関がストップして出勤できない場合も多々あります。
その場合の賃金をどうするか。

また、台風のなかでも徒歩圏内の従業員は出勤していたり、あるいはタクシーで出勤したりするケースもあります。

こういったときにあらかじめルールと決めておかないとトラブルの元になります。

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ノーワーク・ノーペイの原則により、欠勤控除、遅刻控除してかまわない

労働法の世界には、ノーワーク・ノーペイの原則というものがあります。

これは、働いていないと、賃金が発生しないというもので、経営者からみればごくごく当たり前の話しです。
労働力の提供がなければ、当然売上も発生するわけもなく、賃金も発生しないということになります。

これは民法第624条が根拠になっているを言われています。  

民法
(報酬の支払時期)
第六百二十四条 労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
2 期間によって定めた報酬は、その期間を経過した後に、請求することができる。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

労働基準法
(休業手当)
第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

また、仮に会社に誰も出勤することができずに、会社を休業した場合には、別の視点の考え方が必要になります。
労働基準法では休業手当というものがあります。
これは、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者が賃金を補償すべきものとして、規程されております。
しかし、台風などで公共の交通機関がストップした場合には、当然、使用者の責に帰すべき事由ではないと考えます。

参考に、東日本大震災の時の厚生労働省が出したQ&Aを引用しておきます。

地震に伴う休業に関する取扱いについて
【Q1-5】今回の地震により、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていませんが、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能となったことにより労働者を休業させる場合、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たるでしょうか。

[A1-5]今回の地震により、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていない場合には、原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当すると考えられます。ただし、休業について、(1)その原因が事業の外部より発生した事故であること、(2)事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たす場合には、例外的に「使用者の責に帰すべき事由」による休業には該当しないと考えられます。具体的には、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する必要があると考えられます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000017f9e.html#1-5

人間は感情により判断する

台風による欠勤で、賃金支払い義務がないからといって、賃金を支払わない。
法令上はそれでいいのですが、そう単純にいくものではありません。
正社員の方が欠勤控除となった場合に、「それは私の責任ではない、だから全額給与を支給すべきだ」という声もあがってくるでしょう。

そのときに、守るべきは一貫性のある対応です。
人間は一貫性のある判断に、正当性を感じます。
つまり「今までどように対応していたか」というものがとても大事です。

また、一貫性という意味では、労働労働・同一賃金の観点から、正社員とパートタイマーの対応の整合性も問われます。
もし、正社員とパートタイマーで違う対応をする場合には、それなりの根拠を示すことが必要です。

今までと違う対応をする場合

単純に、今までと同じ対応をするなら、話は簡単です。
しかし、違う対応をする場合には、その「理由」を示す必要があります。
理由がないと人は納得しません。

そして、理由とともにきっかけがあると尚受け入れ安いです。
例えば、「顧問の社会保険労務士を変えて指摘を受けた」「赤字続きだが、昇給するかわりに欠勤ルールを厳格化した」「悪天候でも出勤しているスタッフとの整合性を取った」などです。

いずれにしても、作成したルールを就業規則に落とし込み、周知することが大切です。