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回答
労働基準法の適用を受ける労働者には該当しないため、請求に応じる必要はありません。
ただし業務委託契約を結んだスタッフに、作業工程について細かい指示などを行えば、偽装委託と判断され、法令違反となります。
契約の種類という形式面では判断されず、実質的に労働者に該当するかどうかが問われます。
そして裁判となり、当該スタッフが労働者に該当すると判断されれば、残業代の支払いが命ぜられる可能性もあります。
首都圏労働局では、請負・業務委託契約が適正に行われるように、下記パンフレットを発行しています。
「請負・業務委託在適正に行うために」首都圏労働局〈茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川〉
https://www.jassa.or.jp/admin/info/upload_image/080918leaflet_tekisei.pdf
解説
関連法令
労働基準法第9条
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
*就業者が、労働基準法で定める労働者に該当することによって、労働基準法だけでなく労働安全衛生法などの労働関連法規の適用を受けることになります。
業務委託契約とは?
業務委託契約と雇用契約の違いは下記の通りです。
業務委託契約
委託された側が特定の仕事を処理し、処理された仕事と引換えに、委託した側が報酬を支払うことを約束する契約
委託する側とされた側は対等な立場であり、労働者保護を目的とする法律が委託された側には適用されない。
雇用契約
労働者の労働と引換えに、事業主が報酬を与えることを約束する契約。労働基準法などの労働者保護を目的とする法律が適用される。
さらに業務委託契約には3種類あります。
①請負契約:業務による完成品を受け取ることを目的。
②委任契約:法律行為の業務遂行を目的とし、成果の有無は報酬発生と無関係。
③準委任契約:法律行為以外の業務遂行を目的とし、成果の有無は報酬発生と無関係。
上記いずれも発注者側に指揮命令権がないのが重要なポイントです。
指揮命令権行使の具体的判断基準
就業者に対し指揮命令権を行使していると判断されれば、当該就業者との契約が業務委託契約だったとしても、当該就業者は労働者に該当します。
指揮命令権を行使していると判断される具体的な事例として下記のようなものがあります。
・仕事の依頼などに対する就業者側の諾否の自由がない。
・時間や場所に関して指定を受けるなど、就業者側に身体的拘束性が認められる。
・作業工程に対して細かな指示がある。
・賃金額や算出方法が、会社の従業員と類似している。
(準)委任契約の場合は、業務の完成品に対する責任が発注者側にあるため、意見を言わなければいけない時があります。
その場合でも、相手はビジネス上の対等のパートナーであるという意識をもって、業務の性質上当然に必要とされる指示に留めなければいけません。
関連判例
関西医科大学事件 最二小判 平成17年6月3日
大学院で臨床研修を行っていた研修医Aは、研修期間中に奨学金と副直手当の支給を受けた。
更にその支給が給与に当たるとして源泉徴収まで行われていた。
そのような中で、過労が原因の心筋梗塞により死亡しました。
研修医Aの父母が、Aは労働基準法の適用を受ける労働者であるとし、最低賃金額による未払い賃金の支払を病院側に求めました。
判決では、臨床研修は研修医に対する教育的側面を有しつつも、研修指導医の指示の下で行われる医療行為は、病院の開設者のための労務行為であると認めました。
その結果、上記における給与に関する取り扱いと併せて、研修医Aは労働基準法の適用を受ける労働者であるとの判断がされました。