~はじめに~ 就業規則を作成する上で知っておくべき重要ポイント

就業規則は何のためにあるのか?

ひとことで言うなら、健全な事業運営のためです。

そして健全な事業運営のためには、

①労働者が、安心して働くことができる
②経営者が、事業運営に集中することができる

ことが不可欠でしょう。

上記①②を実現するには、労使間でトラブルが生じないように

就業規則で、労働時間・賃金・人事・服務規律など、労働者の労働条件や待遇の基準をあらかじめはっきりと定める

ことは最低限必要です。

さらに就業規則の内容次第では

経営者と労働者の事業運営に対する認識のズレを小さくし、経営者と労働者の一体感を創出する

ということも期待できます。

注意

法令や労働協約などとの効力の関係は下記の通りです。

就業規則の効力について

したがって就業規則も、法令及び当該事業場において適用される労働協約に反することはできません。
法令又は労働協約に反する就業規則がある場合は、所轄労働基準監督署長はその変更を命ずることができます(労働基準法第92条)。

絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項とは?

労働基準法第89条によれば、就業規則に盛り込むべき内容として、

絶対的必要記載事項・・・必ず記載しなければならない事項

相対的必要記載事項・・・各事業場内でルールを定める場合には記載しなければならない事項

があります。

絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項の具体的な内容は下記の通りです。

絶対的必要記載事項

(1) 労働時間関係
始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
(2) 賃金関係
賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
(3) 退職関係
退職に関する事項(解雇に関する事項も含む。)

相対的必要記載事項

(1) 退職手当関係
適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
(2) 臨時の賃金・最低賃金額関係
臨時の賃金等(退職手当を除きます。)及び最低賃金額に関する事項
(3) 費用負担関係
労働者に食費、作業用品その他の負担をさせることに関する事項
(4) 安全衛生関係
安全及び衛生に関する事項
(5) 職業訓練関係
職業訓練に関する事項
(6) 災害補償・業務外の傷病扶助関係
災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
(7) 表彰・制裁関係
表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項
(8) その他
事業場の労働者すべてに適用されるルールに関する事項

就業規則の作成と変更の手続

就業規則の作成義務がある事業場の条件

常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成・変更する場合、所轄労働基準監督署長に届け出なければいけません(労働基準法第89条)。
常時10人未満の労働者を使用する事業場ももちろん、就業規則を作ることはできますが、労働基準監督署への届出は義務づけられていません。

* 1企業で2以上の営業所、店舗等を有している場合、企業全体の労働者の数を合計するのではなく、それぞれの営業所、店舗等を1つの事業場としてとらえ、常時使用する労働者が10人以上の事業場について就業規則を作成する義務が生じます。なお、複数の営業所、店舗等の事業場を有する企業については、営業所、店舗等の就業規則が変更前、変更後ともに本社の就業規則と同一の内容のものである場合に限り、本社所在地を管轄する労働基準監督署長を経由して一括して届け出ることも可能です。

就業規則の作成に際し必要な手続きとは?

就業規則を作成し、又は変更する場合には、所轄労働基準監督署長への届出の前に、

労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければいけません。

さらに、その代表する者の署名又は記名押印のある書面(意見書)を就業規則に添付しなければなりません(労働基準法第90条)。

* ここでいう労働者の過半数を代表する者とは、

①労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと
②就業規則の作成及び変更の際に、使用者から意見を聴取される者を選出することを明らかにして実施する投票、挙手等の方法によって選出された者であること

いずれにも該当する者でなければなりません(労働基準法施行規則第6条の2)。

就業規則変更の際は、労働者にとっての不利益変更に注意

就業規則の作成・変更の手続き上求められているのは、労働者の代表者の意見を聴くことのみです。労働者の代表者の意見に拘束されません。
ただし、だからと言って、上記手続きさえ踏めば、法令や労働協約に反しない限り自由に変更できるというわけではありません。

就業規則を労働者にとって不利益に変更する場合には、労働者の代表の意見を十分に聴くとともに、変更の理由及び内容が合理的なものとなるよう慎重に検討することが必要です。 
就業規則の不利益変更をめぐる労使間の対立が裁判にまで発展し、不利益変更が違法とされた判例もあります。

労働者が就業規則をいつでも見られる状態にしなければいけません

労働基準法第106条第1項によれば、就業規則は、

「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない」

としています。

具体的な方法として、下記のようなものが厚生労働省によっても定められています。ポイントは労働者がいつでも閲覧できるということです。

・労働者の一人ひとりへの配付
・労働者がいつでも見られるように職場の見やすい場所への掲示、備付け、
・電子媒体に記録し、それを常時モニター画面等で確認できるようにする

就業規則の効力が発生するのは、就業規則が何らかの方法によって労働者に周知された時期以降です。
就業規則に施行期日が定められているときはその日、就業規則に施行期日が定められていないときは、労働者に周知された日となります。