就業規則を不利益変更するには?手順・トラブルを避けるためにすべきことを解説します。

就業規則の変更をお考えではありませんか?ただし従業員にとって不利益な変更となると、トラブルに発展する可能性が高いです。本記事ではトラブルを避けつつ、就業規則を不利益変更するための手順や注意点をご紹介します。

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そもそも就業規則の不利益変更は可能なのか?

基本的に、不利益変更をすることは不可能です。しかし、不利益変更が全く許されていないというわけではありません。就業規則の変更が不利益変更である場合は、労働者の過半数で組織する労働組合、もしくは労働者の過半数を代表するものからの合意を得ることが必要になってきます。したがって、変更に対して社員にどれだけ納得してもらえるかが重要になってきます。

ただし、不利益変更に反対をする従業員がいても、その変更が合理的範囲内あれば変更をすることができます。労働契約法第9条において、「ただし、次条の場合は、この限りではない」という但し書きがあり、これが不利益変更の根拠となる法律です。次条の第10条では、就業規則の不利益変更は、変更に合理性があり、その就業規則が周知されている場合は有効なものと認められています。

基本的には不利益変更の案を提案してみないことには、その変更が可能かどうかは、判断できないので、一度変更の案を出してみるようにしましょう。

不利益変更が成立する3つの条件とは

合意が得られない場合、就業規則を不利益変更するにはどのような条件が必要なのでしょうか。ここでは、不利益変更の条件について3つ紹介します。

1.従業員の受ける不利益の程度

就業規則を変更することによって従業員が被る不利益の程度によって、合理性があるかどうかが判断されますが、極端なものでなければ認められるケースが多いです。社会情勢や会社の倒産の可能性なども加味します。そのため、不利益の程度が著しく案が認められなかった場合には、不利益の程度を減らすなどの緩和方法を検討するようにしましょう。

2.変更の必要性

なぜ就業規則の不利益変更をしなければならないのか、という変更の必要性によって合理性があるかどうかが判断されます。例えば、退職金の積立金を減額したいが、会社の利益が上がっていないなどといった状況なのであれば、就業規則を変更する必要性が高い主張できます。

3.変更内容の相当性

変更する就業規則の内容が著しく従業員に対して不利益を被らせてしまう可能性があるケースには、相当性がないといえます。その会社の業界や業種などを参考にして、変更内容が妥当であるのかどうかを検討し、変更内容の相当性を確認するようにしましょう。

不利益変更が成立した事例とは?

それでは、実際に就業規則の不利益変更が成立した事例はどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、不利益変更が成立したケースを2つ紹介いたします。

【住友重機械工業事件】

多額の損失を計上したことを理由として、従業員の報酬を減額したという事件です。当時は住友重機械工業は業績不振であり、企業の株価が下がっていました。そのため、経営陣は辞退を改善するために、2002年度と2003年度の2年度にわたり基準賃金で平均10%ほどの層浪費の削減の対策案を立てました。裁判においては、危機回避を目的とした労働条件の変更であったので、合理性が認められました。

【早稲田大学の年金減額事件】

早稲田大学が勤続20年以上の退職者に対して支給をする年金を減額したという事件です。それに対して受給者の160名以上が無効を求めました。しかし、給付総額が収入総額を上回っており、不況が長期化しているため運用費も確保できず、さらに早稲田大学は運営が不安定であり従来の給付水準のままでは破綻する可能性があると判決が下されました。また、受給者の3分の2以上が同意していることも踏まえ、年金の減額は有効と認められています。

就業規則を変更する流れと注意点とは?

就業規則を変更するにあたり、具体的にどのような手順を踏んで変更していけば良いのでしょうか。ここでは、合意を取るパターンと合意を取らないパターンの2つに分けて、就業規則の変更の流れについて解説します。

【合意を取るパターン】

1.就業規則の変更案の作成

どのような就業規則に変更するのかという案を作成し、この時点で社内説明会を開いて合意を得ます。法律に抵触する箇所がないかどうか、法務担当者と確認を行うようにしましょう。

2.就業規則変更届の作成、意見書の作成

就業規則変更届には決まった様式はありませんが、基本的には労働省のWebサイトなどから雛形をダウンロードして活用するのがおすすめです。

意見書は労働組合、または労働者の代表から意見を聞いたことを証明する書類です。特に意見がない場合には、「特にない」と記載をしましょう。

3.労働基準監督署へ提出

労働基準監督署に「就業規則変更届」「意見書」「変更後の就業規則」の3つを提出しましょう。

4.社内への周知

電子データや書面などで、従業員に就業規則を変更したことを周知しましょう。

【合意を取らないパターン】

1.就業規則の変更案作成、周知

就業規則の変更案を作成し、それを労働組合や幹部などに周知しましょう。これを行わなければ、後々大きなトラブルにつながってしまう可能性があります。

2.就業規則変更届の作成、意見書の作成

就業規則変更届には決まった様式はありませんが、基本的には労働省のWebサイトなどから雛形をダウンロードして活用するのがおすすめです。

意見書は労働組合、または労働者の代表から意見を聞いたことを証明する書類です。特に意見がない場合には、「特にない」と記載をしましょう。

3.労働基準監督署へ提出

労働基準監督署に「就業規則変更届」「意見書」「変更後の就業規則」の3つを提出しましょう。

4.社内への周知

電子データや書面などで、従業員に就業規則を変更したことを周知しましょう。

手順の2・3・4は「合意を取るパターン」と同様です。

合意を取らずに就業規則を変更する際には、必ず就業規則の変更の合理性(先述した3つの条件)を確認しましょう。

不利益変更の際にまずやるべきことは?

就業規則の不利益変更をする際に、まず何から行えばいいのでしょうか。ここでは、まず最初に行うべきことを2つ紹介いたします。

1.不利益変更の理由を言語化する

退職金を減らすなどといった不利益変更を行うにしたも、なぜ減らさなければいけないのかについて、背景と目的を言語化しておく必要があります。背景や目的を明確にしなければ、「役員報酬を増額するためでは?」などの疑念が生まれる可能性があります。

2.社内の影響力がある方の合意を取る

社内の影響力がある方に納得してもらえないと、他の社員からも合意を得られない可能性が高くなってしまいます。変更の案が空中分解してしまうということも起こりかねません。ですので、まず相談をしてみて納得してもらえないのであれば、粘り強く話し合うべきです。

トラブルを避けるための2つのポイント

不利益変更をする際には、どうしてもリスクがつきものです。そのリスクを軽減をすることが、不利益変更をスムーズにおこなっていくためには重要になってきます。そのリスクを軽減する具体的な方法2つ紹介します。

1.社内への周知や合意

従業員のみなさんが納得して合意するときに、本人以外にも配偶者が変更に対して文句を言ってくるケースがあります。退職金にしても奥さんが納得しないということがあります。そのため、ご主人がどう説明するかまでをケアしておくことが重要です。数字を使って第三者まで納得できる資料を作成すると、スムーズに進められます。

2.中長期的な取り組み

実は、日本の厚生年金は現在まで大きな減額がされています。しかし、20年など長い時間をかけて減額しているので、誰も減額に対して文句を言わなくなっています。

会社でも同様に、決算期が近づくと何かやりたいと言い出す経営者が多いですが、3年~5年かけて施策を実行することで、社内からの文句を軽減する必要があるのです。

まとめ

今回は従業員とのトラブルを避けつつ、就業規則を変更する方法をご紹介しました。手順やポイントを押さえて穏便に規則を変更できると良いですね。

日本就業規則診断士協会では、従業員ご本人から第三者まで納得して頂ける説明や、中長期にわたって伴走していくコンサルを行っています。

「就業規則の不利益変更をしたいけど、従業員に納得してもらえるか心配」「第三者まで納得させることができる資料を作れない」という方は、ぜひ一度日本就業規則診断士協会にご相談ください!