「人件費の見直しを行いたい」と考えている経営者の方はきっと多いはず。そんなときは、適切な「労働分配率」を知ることから始めてみてはいかがでしょうか?
業種とその成果から導き出される労働分配率の水準を知っておくことで、自社での人件費が適正なのかどうかがわかります。労働分配率を正しく知ることで、コストカットや従業員のモチベーションアップなどにつながる事業改善のヒントになるかもしれません。また、従業員の方にも労働分配率を知ってもらうことで、「自分の給与に対してどれだけの生産力、売上げが必要か」「給与を上げるための目標」などを知ってもらうことができます。
この記事では、そもそも労働分配率とは何かという基本情報に加え、適正な労働分配率、労働分配率と就業規則との関係についてまでを解説します。
Contents
労働分配率とは
労働分配率とは、「企業が生産した付加価値から、どれくらい従業員に分配したか」を示した指標です。労働分配率の計算方法は下記のとおり、人件費を付加価値で割って算出します。
労働分配率(%)=人件費÷付加価値×100
この式に出てくる「付加価値」とは会社が生み出した売上です。この付加価値の額を計算する方法は、下記の控除法、加算法があります。
■控除法
付加価値=売上高-外部購入価額
■加算法
付加価値=人件費+金融費用+減価償却費+賃借料+租税公課+経常利益
控除法を例にみると、ある商品を20円で仕入れ、それを100円で売ると80円の付加価値が生まれたといえます。
一方の人件費は、月々の給与のほかに、役員報酬、給料賞与、退職給与、法定福利費、福利厚生費、退職年金掛金、賞与引当金繰入額、退職給付引当金繰入額、教育費なども含めて計算します。
つまり労働分配率は、付加価値に占める人件費の割合のことで、人件費が高くなれば、労働分配率が高くなり、人件費が低ければ比率は低くなります。
適正といわれる労働分配率の基準はどこ?
それでは、労働分配率の適正とは何%なのでしょうか。大企業は約50%、中小企業は70〜80%が労働分配率の平均値だといわれていますが、業種別や会社の規模によって大きく違い、一概に「この数字」という基準があるわけではありません。
経済産業省では、平成29年度の業種別労働分配率データを公開しています。参考としてその一部を抜粋します。
<全業種平均47.7%>
- 製造業46.1%
- 電気・ガス業21.5%
- 情報通信業55.4%
- 卸売業48.4%
- 小売業49.5%
- クレジットカード業・割賦金融業29.7%
- 学術研究、専門・技術サービス業60.2%
- 飲食サービス業64.0%
- 生活関連サービス業、娯楽業45.2%
見てのとおり、労働分配率の数字は業種別で大きく差が見られます。
自社において、現在の労働分配率が適正かどうか見るときは、直近3年でどう変化しているのかに着目しましょう。事業に対して労働分配率が大きく乖離している場合は改善を講じる必要が出てきます。従業員への分配が多すぎると労働分配率が上昇し、従業員への還元が多いということになりますが、経営的には圧迫されます。逆に少なすぎると従業員のモチベーションの減退や会社への不満、不信感などにつながりかねません。
まずは、会社の規模や関連する業種と照らしあわせて、自社の事業に合った平均値を確認しましょう。
人件費の見直しだけで解決できるのか
会社のお金を健全に回すために、「現在の会社の売り上げや人件費の使い方を見直したほうがよいのでは……」と考えている経営者の方も多いとお見受けしています。
実際のところ、経営者の方も従業員に対して賞与をどれくらい配ったらいいのか、なぜその金額なのかという根拠のない金額設定になっている方もいるので、当協会のトップページにも掲載している下記の図<お金のブロックパズル〜会社のお金の流れの全体図〜>の仕組みを理解し、経営者の方自身がしっかりと理解することが重要になってきます。
この図の考え方としては、会社の経営状況や労働分配率の把握はもちろん、実は従業員一人ひとりの考え方にも当てはめることができます。
例として、「労働分配率50%の会社で従業員の方が40万円の給与がもらいたかったら、売上を100万円上げる必要がある」と示せます。この図を見ると、従業員の方が自分の給料を上げるためにどの数字を上げて、そのためにどう会社に貢献すればよいかが理解できるようになるはずです。
就業規則の見直しも実は関わってくる
実際に労働分配率を見直した上で給与などを上げたり下げたりしても、従業員の方からその理由を聞かれたときに「こういう計算、仕組みでこの数字になった」と答えられると、従業員たちとの信頼関係を構築できます。それには経営者の方自身が、決めた数字に対する根拠をしっかりと持っていないといけません。
今後、経営方針や事業計画などによって、労働分配率を見直さないといけないときがくることを考えると、就業規則の昇給や賞与の規定内にしっかりと労働分配率についての仕組みや計算方法などの根拠を明記しておくことが大事になってきます。今のうちに昇給や賞与の就業規則を明確にして、従業員に周知および理解してもらうところまで行いましょう。
作成した就業規則を従業員に理解してもらうには?
「人件費」という考え方はあっても、「労働分配率」について着目して考えられる経営者の方は、実は多くはありません。粗利を意識していなかったり、人件費と粗利が連動していないといった経営者の方も多いので、単純に従業員の人件費の増減だけでなく、粗利なども見た上で会社経営を圧迫させず、従業員の満足度も保った経営を行えるよう関わることができるのが大切です。
当協会のサービスを利用では、お金の流れを一緒に整理しながら、制度の見直しや従業員への説明まで対応させていただきます。就業規則の改訂相談やその他人事労務についての相談、アドバイスなどをさせていただくことはもちろん、代表に代わって就業規則のご説明のほか、給料やボーナスはどこから支払われているか、利益はなぜ必要かなど、専門家目線で従業員の皆さまにレクチャーいたします。
就業規則診断士のプランでは、具体的に下記の取り組みを行っています。
就業規則診断士 集中コンサルティングプラン(6~12か月程度)
- ビジョナリープラン(ミッション、カンパニースピリッツ、セルフイメージ)の策定
- 就業規則の作成
- ビジョナリープランを盛り込んだ就業規則の従業員説明会の実施
- 昇給や賞与による、キャッシュフロー・シミュレーション
- 従業員向け、お金の勉強会、その他セミナーなど
- 幹部面談、従業員面談など
就業規則診断士 定額会員プラン
- 就業規則の改訂相談、その他人事労務についての相談、アドバイス(原則としてチャットワーク、または電話)
- 弊社で年3回~4回程度行う、合同のお金の勉強会をはじめとする、各種勉強会に経営者も、従業員も出席できます。
- 代表に代わって従業員に、就業規則などの個別の説明を行う(電話)(本サービスは代表者面談終了後に対応できます)
※以上サービス紹介(https://www.kisoku.pro/service/)より抜粋
6.まとめ
「労働分配率」を知ることで、人件費の適正な数字を知ることができます。しかし、根拠があっても事前の説明や納得されない方法で給与や賞与の増減を行うと、従業員の方たちから信頼を得ることは難しくなります。就業規則に給与や賞与の計算方法をしっかり記載して、会社の理念やビジョンとともに、いつでも共有できるようにしておきましょう。
日本就業規則診断士協会では、適正な労働分配率やそれに伴う就業規則の制定についてなどの無料相談を行っております。
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※従業員の人数によっては一部のみのご相談となる場合もございます。詳しくはご相談の際にお問い合わせください。