性的指向・性自認に関する言動もハラスメントです 

第15条 (その他あらゆるハラスメントの禁止)

第12条から前条までに規定するもののほか、性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

性的指向・・・人の恋愛・性愛がいずれの性別を対象とするかを表すもの
性的自認・・・性別に関する自己意識のこと

条文の目的・存在理由

2020年6月1日施行の改正労働施策総合推進法(中小企業は2022年4月から)が施行されました。
これにより性的指向や性自認に関する差別や、アウティングの防止措置を講ずる義務が事業主に課されました。
アウティングとは本人の許可なく性的指向や性自認を第三者に暴露する行為です。

この条文は2018年1月にモデル就業規則に新設されていました。
LGBT法連合会(性的指向や性自認に関する差別を禁止する法を求める団体)が、超党派の議員連盟や各政党に対し、性的指向・性自認に関するハラスメントの禁止をモデル就業規則へ盛り込むことを要望していました。
LGBTとは、L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシャル)、T(トランスジェンダー)の略称です。

こういった人々への差別は決して許されるものではなく、近年そういった差別に対して行政や社会も厳しい眼を向けています。
法律の遵守や企業の社会的評判の維持といった目的だけでなく、労働環境整備の観点からも必要な条文です。

リスク 社会的評判の低下や人材流出のリスク

性的指向や性自認に関する差別やアウティングが許されないという意識は年々向上していますが、十分ではありません。
かつてはあまり問題視されてこなかったこともあり、「性的指向や性自認のハラスメントは許されない」と全員が認識しているわけではないのです。
 
性的指向や性自認に関する差別が会社内で横行すれば、会社として処分を受ける可能性があります。
さらに優秀な労働者が確保されないというリスクが生じます。

これまで扱ってきた各ハラスメントと同様に、会社として性的指向や性的自認に関する差別を許さない姿勢をはっきりと示す必要があります。
さらに定期的な研修等を通じて社内全体の意識を向上させることが必要です。

改善案

第15条 (その他のあらゆるハラスメントの禁止)

1 第12条から前条までに規定するもののほか、性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。なおここでいう職場とは、労働者が業務を遂行するすべての場所をいう。また、勤務時間内だけでなく、実質的に職場の延長とみなされる勤務時間外の時間を含む。

2 労働者は、一項にいうハラスメント行為を黙認してはならない。

3 一項にいうハラスメント行為の相談窓口は〇〇部とする。また、会社は当該ハラスメントついての相談者に対し不利益な取り扱いをすることはない。

参考判例

経済産業職員がトイレの利用制限を訴えた事件 東京地判 令和1年12月12日

事件概要

 当該職員は、戸籍上は男性であるものの女性として生活する職員でした。
医師から性同一性障害としての診断を受けており、職場と話し合いを重ね、2010年から女性職員として勤務を開始していました。
しかし、女性用トイレの利用については、他の女性職員との間でトラブル防止という経済産業省の判断から、勤務フロアから2階以上離れている女性トイレを利用するよう制限されていました。

そこでトイレの利用制限は違法であるとして国を訴えました。
判決では、トイレの使用を認めないとした国の措置は違法だとして取り消し、賠償を命じました。

就業規則との関係において

当該職員が、女性と認識される度合いが高く、他の女性職員に危害を加えたりする可能性が低かったことを経済産業省は把握していました。
その点が考慮され経産省の措置は違法と判断されました。
また面談した上司の「もう男に戻ってはどうか」との発言も違法と認定され、慰謝料などの支払いも命ぜられました。

この判決は性的少数者(LGBT)の職場環境改善をめぐる初の判決とされています。
今後も事業主は、性的少数者の権利に配慮した労働環境の整備が求められていくと思われます。

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