時間単位年休を導入するには、労使協定の締結に加え、制度導入の旨の記載が必要です

第23条 (年次有給休暇の時間単位での付与)
労働者代表との書面による協定に基づき、前条の年次有給休暇の日数のうち、1年について5日の範囲で次により時間単位の年次有給休暇(以下「時間単位年休」という。)を付与する。
(1)時間単位年休付与の対象者は、すべての労働者とする。 
(2)時間単位年休を取得する場合の、1日の年次有給休暇に相当する時間数は、以下のとおりとする。 
  ① 所定労働時間が5 時間を超え6 時間以下の者…6 時間 
  ② 所定労働時間が6 時間を超え7 時間以下の者…7 時間 
  ③ 所定労働時間が7 時間を超え8 時間以下の者…8 時間 
(3)時間単位年休は1時間単位で付与する。 
(4)本条の時間単位年休に支払われる賃金額は、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の1時間当たりの額に、取得した時間単位年休の時間数を乗じた額とする。 
(5)上記以外の事項については、前条の年次有給休暇と同様とする。

条文の目的・存在理由

時間単位年休は、労働者が急な事情により遅れて出勤することを可能とします。
つまり労働者の多様な働き方に柔軟に対応することができる制度と言えます。

導入するか否かは企業の判断に委ねられています。
この時間単位年休を導入する場合は、労使協定の締結に加え、その旨の記載が必要です。
労使協定での協定事項は下記の通りです。

① 時間単位年休の対象労働者の範囲(対象となる労働者の範囲を定めます。)
② 時間単位年休の日数(5日以内の範囲で定めます。前年度からの繰越しがある場合であっても、当該繰越し分を含めて5日以内です。) 
③ 年次有給休暇1日分に相当する時間単位年休の時間数
(1日分の年次有給休暇に対応する所定労働時間数を基準に定めます。1日の所定労働時間に1時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げて計算します。例えば所定労働時間7時間20分の企業における1日分に相当する時間単位年休の時間数は8時間です。) 
④ 1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数(2時間といった単位も可能ですが、1日の所定労働時間を上回ることはできません。)

リスク

上記モデル条文におけるリスクはありませんが、下記の点に注意してください。

①時季変更権について

時間単位付与であっても時季変更権が事業主にはあります。
しかし、前条で触れたように時季変更権を行使は、業務の代替要員確保の努力を行った上でどうしても行使しなければ、正常な業務がなし得ないような状況に限るべきでしょう。
なお労働者が時間単位での取得を希望しているにも関わらず、日単位に変更することや、その逆の変更も、時季変更には該当せず認められません。

②年次有給休暇計画的付与との関係 

時間単位年休は、労働者が請求した時季に与えるものです。したがって計画的付与として時間単位年休を与えることは出来ません。

*年次有給休暇計画的付与制度
年次有給休暇のうち、5日を超える分について、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度
逆にいうと5日分は労働者の希望する日程で取得させなければいけません。

③半日単位の年休について

半日単位の年休は時間単位年休と異なり、労使協定の締結は不要です。
労働者と事業主が合意の上取得させることができますが、休暇に関することであるため就業規則への記載は必須となります。

「年次有給休暇の半日単位での付与については、労働者がその取得を希望して時季を指定し、これに使用者が同意した場合であって、本来の取得方法による休暇取得の阻害とならない範囲で適切に運用される限り問題がない」

(平7.7.27基監発33号)

なお時間単位年休とは全く異なる制度であるため、半日単位の年休取得は時間単位の年休の残日数に影響を与えません。

④年次有給休暇の年5日取得義務化との関係について

2019年4月より年次有給休暇の年5日取得義務化がスタートしました。
しかし、この時間単位年休については5日のカウント対象とはなりません。
つまり時間単位年休を積み重ねて1日分取得したとしても、年5日の取得義務の1つとして数えることはできません。

改善案

この条文に関する改善案はありません。

参考判例

東京国際郵便局事件 東京地判 平成5年12月8日

事件概要

東京国際郵便局外国郵便課に勤務する職員ら(原告)が、所属組合の庶務会計課への要請行動に参加するため1時間の時間単位年休取得を申請した。
所属課長は、事業の正常な運営が妨げられることと、庶務会計課の正常な業務が阻害されることを理由に、時季変更権を行使し勤務を命じた。
しかし職員(原告)は欠務したため、賃金カットと訓告処分を受けた。
原告らは、それを違法としてカットされた賃金、付加金等を求めた事件。

就業規則との関係において

原告らの欠務が原因で外国郵便課の正常な業務運営に支障をきたすことと、組合の要請活動により庶務会計課が混乱に陥ることを理由に、被告側(郵便局)の時季変更権が行使されました。
しかし、どちらのの理由についても裁判所は、時季変更権の行使の根拠になり得ないと判断しました。
判決では、実際の外国郵便課における業務内容や状況について細かく分析した上で下記のように述べています。(太字化は筆者による)

「原告X1の本件年休時季指定により第一外国課の業務の正常な運営に支障があるとはいえなかったものであり、A課長のした時季変更権の行使は、その要件を欠き、無効というべきである」

「年休の利用目的は労働基準法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨である(最高裁判所昭和四八年三月二日第二小法廷判決・民集二七巻二号一九一頁)。したがって、労働者が年休を取得した当該日をどのように利用し、当該日にどのような行動をするかによって時季変更権を行使できるかどうかが定まるのではなく、当該労働者の所属する事業場を基準として、当該労働者の年休取得日の労働が業務の運営にとって不可欠かどうか、すなわち、年休を取得して労務の提供をしないこと自体によって事業の正常な運営を妨げることとなるかどうかによって決すべきものである

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