1年単位の変形労働時間制は、労働基準法第32条の4に定められています
第41条 (1年単位の変形労働時間制に関する賃金の精算)
1年単位の変形労働時間制の規定(第19条及び第20条)により労働させた期間が当該対象期間より短い労働者に対しては、その労働者が労働した期間を平均し1週間当たり40時間を超えて労働させた時間(前条の規定による割増賃金を支払った時間を除く。)については、前条の時間外労働についての割増賃金の算式中の割増率を0.25として計算した割増賃金を支払う。
条文の目的・存在理由
1年単位の変形労働時間制を採用する会社が当然に守らなければいけないことを改めて明記した条文です。
1年単位の変形労働時間制は、労働基準法第32条の4に定められています。
さらに労働基準法第32条の4の2において、会社が定めた対象期間(*下記にて用語解説)に満たない労働者に対しては割増賃金を支払わなければいけないことを定めています。
1年単位の変形労働時間制
変形労働時間制とは、繁忙期等に勤務時間が増加しても時間外労働としての取扱いを不要とする(割増賃金の支払いが不要になる)制度です。
労働時間を月単位・年単位で換算します。
変形労働時間制の一つである1年単位の変形労働時間制とは、
1箇月を超え1年以内の期間を平均して、1週間当たりの労働時間が40時間を超えないことを条件に、業務の繁閑に応じた労働時間の配分を認める制度です。
例えば1年単位の変形労働時間制を導入すれば、ある繁忙期に1日10時間働かせても割増賃金の支払いは不要となります。
この1年単位の変形労働時間制に関しては、厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署がリーフレットを発行しています。
「1年単位の変形労働時間制」
*本来労働基準法では、原則の労働時間として1日8時間以内かつ週40時間以内を定めています。その時間を超えて働かせられるのは、①災害等による臨時の必要性がある場合②労働基準法36協定締結による場合のみであり、どちらも割増賃金の支払いが必要です。
リスク 実際の労働期間が対象期間よりも短かった場合について
育児休業等の取得により実際の労働期間が対象期間よりも短い場合に対しては、当該就業規則は適用されません。
対象期間とは、労使協定で定める変形労働時間制を適用する期間で、1ヶ月超1年以内で設定されます。
これについては通達が下記のように出ています。
(問)1年単位の変形労働時間制の適用労働者が対象期間中に育児休業や産前産後休暇の取得等により労働せず、実際の労働期間が対象期間よりも短かった場合において、労働基準法第32条の4の2の規定の適用如何。
(平成11年3月31日)(基発169号)労働基準法関係解釈法規の追加について
(答)本条は、途中退職者等雇用契約期間が同法第32条の4第1項第二号に規定する対象期間よりも短い者についての規定であり、休暇中の者などには適用されない
このことについては、就業規則に記載しなければいけないわけではありません。
しかし育児休暇等を取得した労働者が「割増賃金が支払われる」と誤解してしまう可能性もあるため、休暇中の労働者には適用しない旨を明記した方が良いでしょう。
改善案
第39条 (1年単位の変形労働時間制に関する賃金の精算)
1年単位の変形労働時間制の規定(第19条及び第20条)により労働させた期間が当該対象期間より短い労働者に対しては、その労働者が労働した期間を平均し1週間当たり40時間を超えて労働させた時間(前条の規定による割増賃金を支払った時間を除く。)については、前条の時間外労働についての割増賃金の算式中の割増率を0.25として計算した割増賃金を支払う。なお本条は、雇用契約期間が労働基準法32条の4第1項第二号に規定する対象期間よりも短いものについての規定であるため、育児休暇等の休暇取得者には適用されない。
参考判例
当該条文に関する参考判例はありません。
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