賞与を支給する場合は、就業規則に支給対象時期、賞与の算定基準、査定期間、支払方法等を明記しなければいけません

第48条 (賞与)
1 賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。 

2 前項の賞与の額は、会社の業績及び労働者の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する。

条文の目的・存在理由

賞与は、労働基準法などの法律によって支払いを義務付けられていません。
しかし、賞与は、相対的必要記載事項である「臨時の賃金等」に該当します。
そのため賞与を支給する場合は、就業規則に支給対象時期、賞与の算定基準、査定期間、支払方法等を明記しなければいけません。

賞与に関する留意事項

・モデル条文のように、在籍要件を設けることは判例でも認められており、問題ありません。
 また算定対象期間は3ヶ月を超えていれば6ヶ月ずつにする必要はありません。
 例えば7ヶ月と5ヶ月というように算定対象期間を定めることも可能です。

・賞与は「勤務成績に応じて支給され、その額が予め定められていないもの」とされています(通達 昭和22年9月13日付け発基第17号)。
 したがって、下記リスクの項目で述べる通り、あらかじめ額を確定させてしまうと、賞与とみなされなくなります。
 あらかじめ額を確定させているとみなされる表記方法は、「基本給の4.5ヶ月分」、「6ヶ月ごとに50万円」といったものがあります。

・労働者の試用期間を賞与の算定対象期間に含めるか否かについても、会社の裁量で決めることができます。

リスク① 賞与支払が義務化されるリスク

モデル条文のように、支給しないこともあり得ることと、あらかじめ額は確定されていないことを明記することが非常に重要です。

賞与の支払いが困難となり労働者と裁判上の争いに発展することがあります。
その場合、労働者にとっては賞与が主に生活補填的なものであると判断されることもあります。
そうすると賞与の不支給が労働条件の不利益変更に該当するかもしれません。その結果、従来通りの賞与額の支払いを命ぜられる可能性も高まります。

労働者からすると、賞与は生活費の一部であり必要不可欠であることが多々あります。
そのため不支給や減額となると労使間のトラブルに発展する可能性が高まります。少なくとも就業規則には上記モデル条文のような記載をするべきです。

リスク② 支給日に在籍していない場合の取り扱い

算定対象期間中は在籍していたが、支給日には退職している労働者の取り扱いが、モデル条文からはわかりません。

賞与は、過去の会社への貢献に報いるだけでなく、将来も会社に貢献してもらう期待を込めて払うものでもあります。
そのため算定対象期間中だけでなく支給日にも会社に在籍していることを、賞与の支払条件として問題ありません。
したがって、特段の事情がない限りは、支給日にも会社に在籍していることを支給条件とすることをお勧めします。

また、グループ会社等への転籍があり得るのであれば、算定対象期間を満たすが支給日前に転籍しているケースについても記載する必要があるでしょう。なお、労働者にとっては不利となりますが、転籍であっても支給日に在籍していなければ支給しないということでも問題ありません。

注意点

自発的な退職であれば支給日に在籍していない労働者を賞与支給対象から外すことは問題ありません。
しかし、定年退職や整理解雇といった自分自身で退職日を選ぶことができないケースでは、賞与を支給しなければいけないという見解(学説)もあります。一方で、退職日を選ぶことできないケースでも不支給として問題ないという見解もあります。

改善案

第48条 (賞与)
1 賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍し、かつ支給日に在籍していたた労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。 

2 前項の賞与の額は、会社の業績及び労働者の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する。

3 前1項の規定に関わらず、定年退職者と転籍者については、賞与評価対象期間中の在籍期間およびその間の勤務成績に応じた金額の賞与を支払う。

参考判例

立命館事件 京都地判 平成24年3月29日

事件概要

学校法人立命館(被告)は、1年更新の労働協約を締結しながら14年間に渡り「月給の6.1カ月+10万円」を教職員への賞与として支払っていた。
しかし学校側は、国家公務員や民間企業の賞与水準との比較、将来の財政難予測を理由に、従来より月給1ヶ月分減らした額を支払う予定であることを教職員側に伝えていた。
その後も学校側と教職員側の話し合いがまとまらない中、会社は一方的に減額して賞与を支給した。
そのため、教職員205人が減額分の一時金の支払いを求めて提訴した事件。

就業規則との関係において

就業規則には、「賞与及び臨時手当を、予算の範囲内で、理事長が定める要領により支給することができる」と記されており、賞与額は明示されてはいませんでした。
しかし、下記の点が考慮され、賞与減額の合理性はないと判断されました。
学校は、教職員らへの賞与の差額支給を命ぜられました。

経営難などの特段の事情がない限り、年6か月以上の一時金を支払うとの規範意識が学校側にあったと認められること
*ただし、14年間同額の賞与支払が続いていた事実だけをもって、同額での賞与支払が労使慣行になっていたとは言えないと判断されました。

・他の近隣の私立大学と比べて、原告ら教職員の給与水準は低かった。そのため企業経営上、一時金水準を切り下げる差し迫った事情があったとはいえない。つまり労使慣行を変更する高度の必要性があったとは認められないこと

・労使交渉での、理事長の「6か月を目指す、6か月に接近させる」といった賞与支給額についての言動

・毎年業績が変動する民間企業と異なり、被告である学校法人の主な収入源である学生の納付金は安定しており、賞与は月給の後払いとしての性格が強いこと(生活給の要素が大きい)

・一時金減額の救済ないし激変緩和措置としての経過措置をとっておらず、何らの代償措置も行っていなかったこと

どのような場合に労使慣行が成立しているとみなされるかについて判決では下記のように述べています。

「①同種の行為又は事実が一定の範囲において長期間反復継続して行われていたこと、②労使双方が明示的に当該慣行によることを排除・排斥しておらず、当該慣行が労使双方(特に使用者側においては、当該労働条件の内容を決定し得る権限を有する者あるいはその取扱いについて一定の裁量をする者)の規範意識に支えられていること」

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