「なんで○○?」 はロジックハラスメント?
最近ではいろいろなハラスメントが言葉として生まれているが、そのなかに「ロジハラ」というものがある。
これは文字通り、理論的に正しいことを主張し、相手を追い詰めてしまうというものである。
ここでやっかいなのは正論であるが故に、言っている方も内容としては正しいということである。
しかし大事なのは、伝え方であり、今日はその伝え方の話をしてみたい。
たとえば、仕事でのミスを注意するときを考えてみたい。
仕事上ミスがあってはいけないが、それでもヒューマンエラーは起きてしまう。
そのときに「なんでミスをした?」とついつい聞いてしまう。
この聞き方は、内容としては正しい。
また聞いている方は「なんで?」というのは、ミスの原因を確認しているという気持ちがある。
しかしこの「なんで?○○」という言葉は、相手を追い詰める言葉であることを忘れてはならない。
ここで、友人の例を紹介したい。私は社会保険労務士の試験に3回目の受験で合格した。
2回目の試験のときは相当勉強をして臨んだが、惜しくも不合格であった。
当時友人は、税理士事務所の職員だったため、それを上司に報告しなければならなかった。
合格発表日の当日に上司のところに行き、「今年も不合格でした」と報告したところ、次の言葉が返ってきた。
「なんで落ちたの?」という言葉だ。
この言葉は、内容としては100%正論である。
しかも反論のしようもないし、言い訳のしようもない。
だからこそ鋭利な刃物のような鋭さがある。
こう言われては「私の努力が足りませんでした」としか言いようがない。
そんな友人はさらに「なんで努力が足りなかったの?」と言われてしまい、もうそれ以上何も言えなかった。
努力が足りない、、、そんなことは自分自身が一番わかっている。
つまりこうした正論を正面から突き付けられたときに、ロジックでは対応できないため、「頑張ります」「気を付けます」などの精神論的な改善方法に流れていくのである。
しかしそれでは何も解決しないし、改善しない。
共感がないと人はついてこない
日本の会社組織というのは、大きく変わってきている。
少なくとも10年前、20年前の職場よりも、現在の職場のほうが、上司の部下に対する傾聴と共感というものが求められていることは間違いないだろう。
これは部下の立場に立って耳を傾け、さらに共感して指示をするということである。
それにより部下のモチベーションが上がるというものである。
こうしたリーダーのスタイルをサーバントリーダーと呼ぶ。
サーバントリーダーは傾聴の姿勢を崩さず、メンバーの意見にじっくりと耳を傾け、相手の感情を理解しようとする。
相手に寄り添い感情を理解する姿勢は、メンバーに安心感を与える。
こうしたサーバントリーダーと呼ばれる人たちは、ミスを責める前にまずは傾聴する。
そしてミスをした部下に共感することで、彼らの行動の改善を引き出すことがしやすくなる。
具体的には「なんでミスしたの?なんで○○してないの?」という言葉ではなく、相手側から見た質問というものが効果的である。
具体的には「○○が足りなかったのかな」「〇〇が抜けていたのかな」という声掛けである。
これは完全に部下の目線と同じ場所からの問いかけになっている。
これによってはじめて「実は○○がありまして、、、、」「昨日は○○が漏れていて、、、、」など具体的な原因がわかってくることも多い。
上司に対する信頼感や、組織の中での安心感がないと、従業員は本音の部分を語ることはない。
そして本音を語ることがないと、業務の改善も進まないことになる。
サーバントリーダーは、怒らない上司や指導しない上司ではない。
まずは傾聴と共感するといった行動から問題解決をする人たちを指すと私は理解している。
こういった共感で信頼関係を築いた上で、改善に向けた具体的な行動を積み重ねていけば、同じミスはかなりの確率で減少する。