解雇をめぐる労使間トラブルや裁判事例は非常に多く、慎重に作成すべき条文です

第51条 (解雇)
1 労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。
 ①勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。
 ②勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。
 ③業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病が治らない場合であって、労働者が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む。)。
 ④精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき。
 ⑤試用期間における作業能率又は勤務態度が著しく不良で、労働者として不適格であると認められたとき。
 ⑥第66条第2項に定める懲戒解雇事由に該当する事実が認められたとき。
 ⑦事業の運営上又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事由により、事業の縮小又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、かつ他の職務への転換が困難なとき。
 ⑧その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。 

2 前項の規定により労働者を解雇する場合は、少なくとも30日前に予告をする。予告しないときは、平均賃金の30日分以上の手当を解雇予告手当として支払う。ただし、予告の日数については、解雇予告手当を支払った日数だけ短縮することができる。

3 前項の規定は、労働基準監督署長の認定を受けて労働者を第65条第1項第4号に定める懲戒解雇にする場合又は次の各号のいずれかに該当する労働者を解雇する場合は適用しない。  
 ①日々雇い入れられる労働者(ただし、1か月を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
 ②2か月以内の期間を定めて使用する労働者(ただし、その期間を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
 ③試用期間中の労働者(ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)

4 第1項の規定による労働者の解雇に際して労働者から請求のあった場合は、解雇の理由を記載した証明書を交付する。

条文の目的・存在理由

「解雇」は会社側の一方的な意思表示により労働契約を終了させることです。
解雇をめぐる労使間トラブルや裁判事例は非常に多く、慎重に作成すべき条文です。

また「解雇」は、「退職に関する事項」であり、就業規則の絶対的必要記載事項として必ず記載する必要があります。

なお、本条文4項の証明書交付は、労働基準法第22条に定められており、遅滞なく交付することが、会社に義務付けられています。
*第1項は解雇後の証明書請求、第2項は解雇予告日から退職日までの証明書請求について規定

その他の解雇に関するポイントは下記の通りです。

解雇の種類について

普通解雇 (上記モデル条文第1項①〜⑤) 

労働者が労働契約に通りに働くことができない場合に、会社が労働契約を一方的に解消する。

懲戒解雇(上記モデル条文第1項⑥)*論旨解雇含む

重大な企業秩序維持義務違反を犯した労働者を、懲罰的に労働契約を解消する。
モデル条文第3項にある通り、労働基準監督署の解雇予告除外認定を受ければ、解雇予告をする必要はなくなります。

整理解雇 (上記モデル条文第1項⑦)

会社の経営難など会社の事情を理由に、労働者との契約を一方的に解消する。
裁判上の争いにまで発展した場合、一般的に下記4点が、法的に有効な整理解雇かどうかの判断基準となります(企業規模や経営実態も考慮されます)。

  ⑴人員削減を行う必要性

  ⑵できる限り解雇を回避するための措置を尽くすこと

  ⑶解雇対象者の選定基準が客観的合理的であること

  ⑷解雇整理手続きが妥当であること

解雇規制について

上記モデル条文第2項(解雇予告)、第3項(解雇予告の例外)、第4項(解雇証明書)は、労働基準法で定められており、法定の基準を下回ることはできません。

解雇事由については、会社の裁量により定めることができますが、法律で解雇が禁止されている事項もあります。

また、禁止事項に該当しなくとも、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」解雇は、権利濫用とみなされ無効となります(労働契約法第16条)。
ここで言う「社会通年上相当」とは、労働者の行為や状態に対する会社の対応が、社会的常識に照らして相応しいことを指します。

法律で解雇が禁止される場合(モデル条文解説より引用 太字は筆者による)

① 労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇(労基法第3条)。 

② 労働者の性別を理由とする解雇(均等法第6条)。 

③ 労働者の業務上の負傷、疾病による休業期間とその後30日間及び産前産後の休業の期間(産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内又は産後8週間以内の女性が休業する期間)とその後30日間の解雇(労基法第19条)。 

*業務上の事由による負傷、疾病の労働者が療養開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合(又はその日以降、同年金を受けることになった場合)又は天災事変その他やむを得ない事由によって事業の継続が不可能となったときで事前に労働基準監督署長の認定を受けた場合は、解雇の制限がありません。

④ 労働者が労働基準監督機関に申告したことを理由とする解雇(労基法第104 条、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第97条)。 

⑤ 女性労働者が婚姻したこと、妊娠・出産したこと等を理由とする解雇(均等法第9条第2項、第3項)。また、女性労働者の妊娠中又は産後1年以内になされ 解雇は、事業主が妊娠等を理由とする解雇でないことを証明しない限り無効とされています(均等法第9条第4項)。 

⑥ 労働者が、個別労働関係紛争に関し、都道府県労働局長にその解決の援助を求めたことを理由とする解雇(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)第4条)。 

⑦ 労働者が、均等法、育児・介護休業法、労働施策総合推進法及びパートタイム・ 有期雇用労働法に係る個別労働紛争に関し、都道府県労働局長に、その解決の援助を求めたり、調停の申請をしたことを理由とする解雇(均等法第17条第2項、 第18条第2項、育児・介護休業法第52条の4第2項、第52条の5第2項、 労働施策総合推進法第30条の2第2項、第30条の6第2項、パートタイム・ 有期雇用労働法第24条第2項、第25条第2項)。 

⑧ 労働者が育児・介護休業等の申出をしたこと、又は育児・介護休業等をしたことを理由とする解雇(育児・介護休業法第10条、第16条、第16条の4、第 16条の7、第16条の10、第18条の2、第20条の2、第23条の2)。 

⑨ 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、又はこれを結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたこと等を理由とする解雇(労働組合法(昭和24年法律第174号)第7条) 

⑩ 公益通報をしたことを理由とする解雇(公益通報者保護法(平成16年法律第122号)第3条) 等

解雇予告について

解雇予告については、労働基準法第20条で定められています。
労働基準法第20条では、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」が、解雇予告の例外として規定されています。

労働基準監督署長の認定を受けずに即時解雇(予告なしによる解雇)をした場合でも、客観的事実があった場合は即時解雇は有効ですが、労働基準法第20条違反となります。

なお「事業の継続が不可能となった場合」に該当するかどうかの判断基準は、社会通念上採るべき必要な措置を講じても事業運営が出来ないような状況かどうかです。
具体的には、天災や火災などによる事業場の喪失などがあり得ます。したがって経営判断ミスによる経営困難といった場合は該当しないことになります。

注意

解雇予告の除外認定を行う労働基準監督署は行政機関である一方で、裁判で解雇の適法性を判断するのは司法です。
したがって具体的案件に対する判断が分かれる可能性は残ります。

有期労働契約者の解雇について

 有期労働契約(期間の定めのある労働契約)を結んだ労働者に対し、契約終了前に解雇を行うことは、やむを得ない場合を除いて原則として出来ません(労働契約法第17条)。期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳格に判断されます。

 一方で、契約期間満了に伴う労働契約の終了は、解雇に該当しません。したがって、原則として解雇制限や解雇予告といった規制から外れますが、3回以上契約が更新されている場合や1年を超えて継続勤務している人については、下記の厚生労働省告示にある通り注意が必要です。太字は筆者による。

「有期労働契約においては、契約期間が過ぎれば原則として自動的に労働契約が終了することとなりますが、3回以上契約が更新されている場合や1年を超えて継続勤務している人については、契約を更新しない場合、使用者は30日前までに予告しなければならないとされています(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」<厚生労働省告示>)。

さらに、反復更新の実態などから、実質的に期間の定めのない契約と変わらないといえる場合や、雇用の継続を期待することが合理的であると考えられる場合、雇止め(契約期間が満了し、契約が更新されないこと)をすることに、客観的・合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないときは雇止めが認められません。従前と同一の労働条件で、有期労働契約が更新されることになります。(労働契約法第19条)」

労働契約の終了に関するルール 厚生労働省ホームページより引用https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/keiyakushuryo_rule.html

リスク 

リスクはありませんが、前述の通り「解雇」は労使間トラブルが発生しやすい事項です。会社の裁量で解雇事由を独自に定めることはできますが、上記モデル条文第1項にある事項以外を定める場合には、専門家等に相談しながら慎重に定めることをお勧めします。

補足

就業規則に記載されていない事由を理由に、会社は労働者を解雇できるかどうかについては、学説においても判断が分かれています。
裁判にまで発展した場合に、解雇権濫用と判断される可能性をできる限り減らすためにも、上記モデル条文第1項⑧のような包括的な規定を設けることが有用です。

改善案

3 前項の規定は、労働基準監督署長の認定を受けて労働者を第65条第1項第4号に定める懲戒解雇にする場合又は次の各号のいずれかに該当する労働者を解雇する場合は適用しない。  

 ①日々雇い入れられる労働者(ただし、1か月を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)

 ②2か月以内の期間を定めて使用する労働者(ただし、その期間を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)

 ③試用期間中の労働者(ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)

4 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合の解雇で、労働基準監督署の解雇予告除外認定を受けた場合には、第2項の規定は適用しない。

参考判例

セガ・エンタープライゼス事件 東京地判 平成11年10月15日

事件概要

労働者A(原告)は会社(被告)から、協調性、労働能力、適格性が欠如していると評価されていた。

それでも会社は労働者Aの雇用を維持しようと努め、様々な部署で労働者Aの勤務可能部署を模索し、各部署との面接も実施した。しかし労働者Aが、これを拒否したり、各部署も受け入れがたいとの結論を下した。そのため会社は労働者Aに対し退職勧奨を行ったが、労働者Aはこれも拒否した。

会社は、就業規則の解雇事由「労働能率が劣り、向上の見込みがない」に該当するとして、労働者Aに対し、解雇通知を行った。
一方で労働者Aは、解雇無効を主張し、地位保全と賃金仮払いの仮処分を求めて提訴した事件。

就業規則との関係において

判決において、解雇は無効と判断されました。その結果会社は、労働者Aへの賃金の仮払いを命じられました。判決のポイントは下記の通りです。

・就業規則「労働能率が劣り、向上の見込みがない」の解釈について
就業規則に記載された他の解雇事由「精神又は身体の障害により業務に堪えないとき」、「会社の経営上やむを得ない事由があるとき」などは、解雇事由が極めて限定的な場合に限られていると判断した上で、下記のように述べています。

「(労働能率が劣り、向上の見込みがないこと)に該当するといえるためには、平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働能率が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければならないというべきである。」

・雇用関係を維持するための会社の努力について
下記判決の用語について)債権者・・・労働者A 債務者・・・会社

「・・・体系的な教育、指導を実施することによって、その労働能率の向上を図る余地もあるというべきであり(実際には、債権者の試験結果が平均点前後であった技術教育を除いては、このよう教育、指導が行われた形跡はない。)、いまだ「労働能率が劣り、向上の見込みがない」ときに該当するとはいえない。なお、債務者は、雇用関係を維持すべく努力したが、債権者を受け入れる部署がなかった旨の主張もするが、債権者が面接を受けた部署への異動が実現しなかった主たる理由は債権者に意欲が感じられないといった抽象的なものであることからすれば、債務者が雇用関係を維持するための努力をしたものと評価するのは困難である。」

本件解雇は、会社が労働者の雇用維持に努めた後になされたものと思えますが、会社側が敗訴となりました。
解雇権の濫用はあってはなりませんが、会社が正当だと判断する解雇を有効と認めてもらう必要があります。
できる限り能力改善の指導や注意を文書として残すというような対策が必要でしょう。

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