長時間労働者に対する面接指導は、業種や企業規模に関わらず実施義務があります

第58条 (長時間労働者に対する面接指導)

1 会社は、労働者の労働時間の状況を把握する。

2 長時間の労働により疲労の蓄積が認められる労働者に対し、その者の申出により医師による面接指導を行う。

3 前項の面接指導の結果必要と認めるときは、一定期間の就業禁止、労働時間の短縮、配置転換その他健康保持上必要な措置を命ずることがある。

条文の目的・存在理由

「長時間労働者に対する面接指導」は主に、労働者の健康被害の未然防止が狙いです。
また、業務効率の向上や、心身に不調をきたした労働者の休職や退職による人手不足の防止を図るといった効果も期待されます。

「長時間労働者に対する面接指導」は、「安全衛生」の項目に分類され、就業規則の相対的必要記載事項です。
しかし、この面接指導は労働安全衛生法に定めがあり、業種や企業規模に関わらず実施義務があります。したがって実務上は記載が必須でしょう。

面接指導の概要に関する図は下記の通りです。
このモデル条文では触れられていない「月100時間超の時間外・休日労働を行った研究開発業務従事者、高度プロフェッショナル制度適用者」に関する内容も含まれています。

面接指導の概要

※1 時間外・休日労働時間が月80時間を超えた労働者が対象。 

※2 月100時間超の時間外・休日労働を行った研究開発業務従事者、高度プロフェッショナル制度適用者については、面接指導実施の申出がなくても対象 

※3 月80時間超の時間外・休日労働を行った者については、申出がない場合でも面接指導を実施するよう努める。月45時間超の時間外・休日労働で健康への配慮が必要と認めた者については、 面接指導等の措置を講ずることが望ましい。 

※4 対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(労使委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の 時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業 場外において労働した時間との合計の時間。 

※5 1週間当たりの健康管理時間が、40時間を超えた場合におけるその超えた時間について、1月当たり100時間を超えない高度プロフェッショナル制度適用者であって、申出を行った者については、医師による面接指導を実施するよう努める。

「長時間労働者への医師による面接指導制度について(厚生労働省作成)」より引用 https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000553571.pdf

長時間労働者に対する面接指導に関する重要なポイント

・労働時間の状況把握(労働安全衛生法第66条の8の3)

労働時間の状況把握がずさんであれば、「長時間労働者に対する面接指導」が適切になされません。
そのため、労働安全衛生法第66条の8の3では、労働時間の状況把握を適切に行わなければいけないことを明記しています。
具体的な方法としては、「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュ ータ等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録等の客観的な方法その他の適切な方法(モデル条文解説文より引用)」があります。

対象労働者(労働安全衛生法第66条の8第1項、労働安全衛生法規則第52条の2)

①休憩時間を除いて1週間当たり40時間を超えて労働させた場合において、その超過時間が、1か月当たり80時間を超えている。
かつ
②疲労の蓄積が認められる。

①②の条件を満たす労働者の申出があった場合には、会社は医師による面接指導を行わなければなりません。
なお産業医は、上記要件に該当する労働者に対して、面接指導の申し出を行うことを勧奨することもできます。

*1か月以内に長時間労働者に対する面接指導を受けた者で、面接指導を受ける必要がないと医師が認めた場合は面接指導を行う必要はありません。 

労働者への情報通知義務(労働安全衛生規則52条の2第3項)

上記①に該当する労働者に対し、超過時間に関する情報を速やかに通知しなければいけません。

面接指導実施後の措置(労働安全衛生法第66条の8 第4・5項)

①会社は、面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければいけません。

②会社は、上記①による医師の意見を勘案し、

労働安全衛生法第66条の8 第5項
「その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない」

とされています。(モデル条文第3項)

面接指導結果の記録(労働安全衛生法第66条の8第3項)

会社は、上記面接指導結果の記録を作成して、5年間保存しなければいけません。この記録は医師の意見が記載されたものでなければいけません。

リスク 面接指導対象労働者が明確でない 

モデル条文では、労働者が面接指導対象となる要件について具体的に記述されていません。
労働安全衛生法に記載されていますが、労働者自身が必ずしも法定の要件を熟知しているわけではありません。
したがって、就業規則にも労働安全衛生法と同様の要件を記載した方が良いでしょう。

また前述の通り、労働安全衛生規則52条の2第3項では、時間外・休日労働時間が月80時間を超えた労働者に対し、超過時間に関する情報を速やかにに通知しなければならない旨が規定されています。
要件に該当した事実を会社が労働者に伝える旨を就業規則に記載した方が良いでしょう。

改善案

第58条 (長時間労働者に対する面接指導)
1 会社は、労働者の労働時間の状況を(タイムカードにより/出退勤記録システムなど)により把握する。

2 会社は、休憩時間を除いて1週間当たり40時間を超える労働時間が、1か月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者に対し、その者の申出により医師による面接指導を行う。ただし、1か月以内に面接指導を受けた者であって、面接指導を受ける必要がないと医師が認めた場合を除く。

3 第2項の労働時間に関する要件を満たした労働者に対して、会社は速やかにその超過時間に関する情報を通知する 。

4 前項の面接指導の結果必要と認めるときは、一定期間の就業禁止、労働時間の短縮、配置転換その他健康保持上必要な措置を命ずることがある。

参考判例

「長時間労働者に対する面接指導」に直接関連する参考判例はありません。
しかし、労働時間の管理を怠ったことが安全配慮義務に違反するとして、労働者あるいは労働者の遺族が会社に対し訴訟を提起し、損害賠償を請求するといった裁判例は多く存在します。

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