遅刻、早退、欠勤などのルールを明確にします
第18条 (遅刻、早退、欠勤等)
1 労働者は遅刻、早退若しくは欠勤をし、又は勤務時間中に私用で事業場から外出する際は、事前に___に対し申し出るとともに、承認を受けなければならない。ただし、やむを得ない理由で事前に申し出ることができなかった場合は、事後に速やかに届出をし、承認を得なければならない。
2 前項の場合は、第43条に定めるところにより、原則として不就労分に対応する賃金は控除する。
3 傷病のため継続して___日以上欠勤するときは、医師の診断書を提出しなければならない。
条文の目的・存在理由
労働者には、雇用契約に基づく労務提供義務があります。
したがって遅刻、早退、欠勤、私用の外出は、労務の提供がないことになるため、契約違反つまり債務不履行となります。
しかし、労働者側の体調不良や家庭の事情などにより、どうしても労務の提供ができない場合が出てきます。
その場合におけるルールを定めたのが本条文です。
なお賃金について、「ノーワーク・ノーペイ」の原則により、不就労分については無給で問題ありません。
そのことについて労使双方の再確認を行います。
また医師の診断書の提出を求める条項については、下記のような目的があります。
①労務管理上も重要である労働者の健康管理
②仮病による欠勤に対する厳正な対処(他の従業員の士気にも関わります)
リスク① 届出と許可の違いについて
「無断欠勤」という言葉がよく使われますが、この言葉からは、欠勤する旨を労務管理者に伝えさえすれば良いという印象を与えます。
しかし、労働者には雇用契約に基づく労務提供義務がある以上、届出では足りず労務提供を受ける側の許可が必要です。
したがって、このモデル条文のように、承認あるいは許可の文言を用いるべきです。
リスク② 懲戒処分について
正当な理由のない遅刻や私用外出などを繰り返す労働者に、懲戒処分として、不就労時間を超える額の減給を行うことも可能です。
しかし、その際には以下の点に気をつける必要があります。
・就業規則に必ず懲戒事由として遅刻や私用外出を定めること
・労働基準法91条にある制裁の制限を超える減額はできないこと
労働基準法第91条
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
リスク③ 断続的に欠勤を行う労働者に対する対応
モデル条文の場合、断続的に欠勤を行う労働者に対し、医師の診断書提出を求めることができません。
したがって、断続的に欠勤を行う労働者に対しても、場合によっては診断書提出を求めることができるようにするべきでしょう。
リスク④ 診断書提出の際の費用負担について
この点について、法律上のルールはありません。
しかし、トラブルを避けるためにも会社と個人のどちらが負担するか決めたほうが良いでしょう。
私見を述べると、会社が提出を命じる場合には、会社負担とするのが社会通念上妥当と思われます。
改善案
第18条 (遅刻、早退、欠勤等)
1 労働者は遅刻、早退若しくは欠勤をし、又は勤務時間中に私用で事業場から外出する際は、事前に___に対し申し出るとともに、承認を受けなければならない。ただし、やむを得ない理由で事前に申し出ることができなかった場合は、事後に速やかに届出をし、承認を得なければならない。
2 前項の場合は、第43条に定めるところにより、原則として不就労分に対応する賃金は控除する。
3 傷病のため継続して__日以上欠勤するときは、医師の診断書を提出しなければならない。なお断続的欠勤が続き、会社が必要と判断した場合も同様の扱いとする。
参考判例
東京プレス工業事件 横浜地判 昭和57年2月25日
事件概要
労働者A(原告)は、6ヶ月間の間に24日の遅刻と14日の欠勤をしていた。
会社規則で、遅刻・欠勤の場合の事前届出が義務づけられていたが、届出があったのは1回のみであった。
会社は、当該労働者に対し再三注意・指導を行ったが、労働者の勤務態度に改善が見られなかった。
就業規則の懲戒事由に該当するとして、会社は懲戒解雇を行った。
原告は地位保全及び賃金支払の仮処分を求めた事件。
就業規則との関係において
判決では、下記のように述べ、原告の訴えを退けました。
「・・・事前に届出のない遅刻、欠勤は、被申請人の業務、職場秩序に混乱を生ぜしめるものであることが明らかであるから、以上によれば、申請人には就業規則第四一条第三号、労働協約第三〇条第三号の「正当な理由がなく遅刻、早退または欠勤が重なったとき」との懲戒解雇事由があったものと一応認められる。」
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