就業規則になくても欠勤控除できる?控除の計算方法やよくあるトラブルも解説

10人未満の企業には就業規則作成の義務がないため、作成していないという会社もたくさんあります。しかし、さまざまな人が従業員として働くようになると、多様な考え方、希望する働き方が出てくるもの。そのようなときに、会社として一定のルールが必要になってくるでしょう。

いきなりカッチリとした就業規則を作る必要はありませんが、考えに行き違いが起こりやすい事項、会社側が労働者に望むことなど、ある程度のルールを作成しておきましょう。

この記事では、遅刻や欠勤で就業時間内にいなかった場合や、就業規則に欠勤控除の項目を定めていなかった場合、どうすればいいかについて解説します。

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就業規則に記載がなくても欠勤控除はできる?

勤怠管理表

結論からいうと、就業規則に規程がなくても、「ノーワーク・ノーペイの原則(労働基準法24条)」に基づき、欠勤、遅刻・早退は当事者の給与から控除することは可能です。

まず「ノーワーク・ノーペイの原則」とは、労働者が欠勤や遅刻により労働しなかった時間において、企業はその時間にあたる給与の支払い義務は発生しないというものです。労働者都合の遅刻や欠勤のほか、台風や大雪の自然災害などの企業と労働者、どちらの責任もない不可抗力による休業にも、ノーワーク・ノーペイの原則が適用されます。

ノーワーク・ノーペイの原則が適用されるかどうかの判断基準は、「従業員の責任である」「従業員と企業のどちらにも責任がない」ことが挙げられます。逆に、「会社の都合」での休業や従業員を自宅待機としたとき、有給休暇をとったときなどはノーワーク・ノーペイの原則は適用されませんので、給与の支払い義務が生じます。

欠勤控除の計算方法とは

PCで作業をしているビジネスマン

それではノーワーク・ノーペイの原則において欠勤分の控除を行う場合、どのような方法で計算されるのでしょうか?

実は欠勤控除の計算方法について、法律上の規定は特にありません。そこで、雇用側が合理的な計算方法を定めておくことが大切になってきます。

例①:一般的な計算方法

(基本給+諸手当)÷ 1カ月の平均所定労働時間

一般的な計算方法(モデル条文就業規則第38条第3項の算式)は、

(365日−年間所定休日日数)×1日の所定労働時間÷12

この場合、「週休が何日なのか?」「祝日の扱いは?」「うるう年の際は?」など、「年間所定休日日数」によって状況は異なります。実際に、この「年間所定休日日数」が何日なのかを把握するのに苦労している経営者の方が多い印象です。

例②:就業規則がない場合のおすすめ計算方法

(基本給+諸手当)÷ 1カ月の所定労働日数

(1カ月の日数−1カ月の休みの日数)×1日の所定労働時間

この場合、その月の数字で計算するためわかりやすく、月ごとの休日の数による影響も緩和できます。特に就業規則がない場合、会社として休日をどう定めているか曖昧なケースもあります。

また、先に紹介した「モデル条例による算式」を必ず使わないといけないというルールはないので、計算しやすくかつ従業員にも誠実に対応できる、この「例②」の計算式をおすすめしています。

欠勤控除に関するよくあるトラブル。こんなときはどうすればいい?

欠勤控除に関するよくある疑問やトラブルについて紹介していきます。紹介するトラブルは、就業規則があったとしても起こりうることなので、十分に注意が必要です。

①欠勤控除の計算をしたら金額がマイナスになった

減額方式で計算する場合、金額がマイナスになることもあります。従業員に対して返金や支払いを求めることは、制度上では問題ありませんが、倫理的にどうなのかという問題が発生します。その場合の対処法として、0円扱いにしましょう。ちなみに欠勤日数が10日までの場合は減額、それ以上欠勤している場合は出社した日数に応じて給与を算出するのがよいでしょう。

また、家族手当や住宅手当といった手当を減額対象に入れるかという問題も絡んできます。これもまた、どう扱うべきかという決まりが明確にあるわけではなく、企業の理念や判断に委ねられています。もし会社が「手当は労働に対して出すものではない」という考え方であれば含めなくて良いでしょう。しかし、「手当も労働に対する報酬の一部だ」という考え方であれば、含めましょう。年間で計算するより、月間で計算することでマイナスを避けられるため、先ほど紹介した1カ月の数字で計算する方法がおすすめです。

ちなみに、マイナスになったときに0円扱いにすることはできるものの、社会保険料分の金額は従業員に請求することができます。これについてもトラブルになりやすいので、従業員にはしっかりと説明した方がよいでしょう。欠勤の場合の手当をどう扱うのかについてもあらかじめ就業規則で定めておくと、従業員にも納得してもらえますよ。

②年俸制や役員報酬の場合の欠勤控除

残業代がつかない管理監督者に対しては、欠勤控除は適用できません。もし管理監督者でない場合は、年俸制という給与体系は法律上では成り立たないので、欠勤控除ができることになります。

従業員の場合はどうでしょう。「年俸制」であっても、給料の考え方はほかの月給制と変わらない仕組みになっているため、欠勤控除をしても問題はありません。年俸制の場合も賞与などの手当を減額対象に含めるかどうかは、企業ごとの取り決めとなります。

役員報酬に対して欠勤控除ができないのは、従業員とは区別されることで労働基準法が適用できないためです。また、役員報酬は変えると経費計上ができない仕組みになっています。この観点からも、役員報酬に対して欠勤控除を行うことは避けるべきといえます。

欠勤控除は就業規則で定めるのがおすすめ

ノーワーク・ノーペイの原則に基づいて、就業規則に記載がなくても欠勤控除自体はすることができます。ただし、従業員との信頼関係構築やトラブル回避のためにも、就業規則に記載した上でしっかりとスタッフに周知してから履行することが大切です。

前述した年棒制の場合の欠勤控除のように、就業規則があってもトラブルにつながるケースは意外と多いものです。

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握手をしているビジネスマン

就業規則の本来の目的は、従業員が自社の労働条件などに対してきちんと納得感をもって働いてもらおうというものです。そのため、就業規則の周知は会社の義務となっており、従業員が常に自由に閲覧できる状態にしておく必要があります。

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