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回答
従業員に対する、年次有給休暇の残日数通知は、法律上の義務ではありません。
一方で、平成20年に作成された「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針)では、労働者の有給取得の促進を図ることを、事業主に対して求めています。
従って、有給付与日数の従業員への通知は法的義務ではないものの、有給の趣旨(従業員の心身の疲労を回復させること)に照らせば、何らかの方法で通知した方が良いと言えるでしょう。
なお通知に法的義務はありませんが、有給管理簿作成は、労働基準法施行規則第 24 条の7において、事業主に義務付けられています。
労働基準法施行規則第 24 条の7
使用者は、法第 39 条第 5 項から第 7 項までの規定により有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第 1 基準日及び第 2 基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(第 55 条の 2 において「年次有給休暇管理簿」という。)を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後 3 年間保存しなければならない。
年次有給休暇は、要件を満たせば、必ず労働者に取得権利が発生します。
繰り返しになりますが、有給残日数通知に法的義務は、ありません。
しかし従業員から有給に関する質問等があった場合に、「取得させないために敢えて知らせていなかったのではないか」などの疑念を持たれないためにも、給与明細等で残日数を記載するのが一般的です。
解説
年次有給休暇とは
年次有給休暇の趣旨について、厚生労働省は下記のように述べています。
労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、また、ゆとりある生活の実現にも資するという位置づけから、法定休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与える制度
年次有給休暇制度について
なお、年次有給休暇は、法律の要件を満たせば、当然に発生する権利です。
労働者からの請求があって初めて生じる権利ではないので、注意してください。
- 雇い入れの日から起算して6ヶ月継続勤務し、
- 全所定労働日の8割以上を出勤
した労働者に対して、まずは入社6ヶ月後に10労働日の年次有給休暇が与えられます。
その後、継続勤務年数1年ごとに下表の日数の年次有給休暇が与えられます。
継続勤務年数 | 6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月以上 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
パートタイマーなどの、所定労働日数が少ない労働者にも下記表の通りに付与しなければいけません。
週所定 労働日数 | 1年間の所定 労働日数 | 雇入れ日から起算した継続勤務期間(単位:年) | ||||||
0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 | ||
4日 | 169日~216日 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
3日 | 121日~168日 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 |
2日 | 73日~120日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 |
1日 | 48日~72日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 |
なお、年次有給休暇は、発生日から起算して2年間の消滅時効にかかります。
パートタイマーなどの時給制で働く人は、通常2の方が多くなります。