精勤手当は、金額や支給条件を会社が独自に制度設計できます

第37条 (精勤手当)
1 精勤手当は、当該賃金計算期間における出勤成績により、次のとおり支給する。
  ① 無欠勤の場合     月額___円
  ② 欠勤 1 日以内の場合 月額___円
2 前項の精勤手当の計算においては、次のいずれかに該当するときは出勤したものとみなす。   
  ① 年次有給休暇を取得したとき 
  ② 業務上の負傷又は疾病により療養のため休業したとき 
3 第1項の精勤手当の計算に当たっては、遅刻又は早退_回をもって、欠勤1日とみなす。

条文の目的・存在理由

精勤手当は、労働者の出勤を促すための手当です。
チームで業務を行なっている場合は、急な欠勤が会社全体の生産性に悪影響を及ぼすことが少なくありません。

法的に義務付けのある手当ではないため、金額や支給条件は、会社が独自に設定できます。
また、精勤手当も絶対的必要記載事項であるため、設けるのであれば就業規則への記載が必要です。

精勤手当を設ける際の注意点

・精勤手当がなくとも、労働契約上、労働者は全所定労働日に働かなければいけません。
 そのような前提に立った上で精勤手当が設けられていることから、当該手当は会社が毎月支払うことを予定しているものと言えます。
 したがって臨時の給与には該当しないため、割増賃金の基礎額に算入しなければいけません。
 一方で精勤手当は割増賃金の基礎額に参入しなければいけませんが、最低賃金の対象から除外されます。
 参考)「最低賃金の対象となる賃金」(厚生労働省HP)https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-12.htm

・体調が悪い場合にまで無理して出勤を強いるのは、労働者だけでなく会社にとっても不利益になることが多々あります。したがって当該モデル条文第2項②のような項目を設けることで、労働者に無理を強いないようにすることも必要です。

・精勤手当の減額・廃止は、労働条件の不利益変更に該当するため、必要性と合理的な理由が求められます。
 また労働組合や労働者等と事前協議を行い、理解を得ることも必要です。

リスク 年次有給休暇との関係について

冒頭で解説した通り、精勤手当を設ける設けないだけでなく、支給基準も自由に設定できます。
したがってモデル条文とは異なり、年次有給休暇を取得した場合は精勤手当の対象から外すことも可能です。

しかし、その場合は労働基準法第136条

「使用者は、有給休暇を取得した者に対して、給与を減らす等の不利益な取扱いをしてはならない」

という規定との関係が問題になります。
この点については、有給休暇の取得を抑制するほどの高額な手当でもない限りは、法令違反ではないとされています(下記判例参照)。

このことから有給休暇を取得した労働者に対し精勤手当を支給しないのであれば、手当額についても考慮が必要です。
ただ政府による年次有給休暇取得推進の方向性からすると、モデル条文のように年次有給休暇取得者も精勤手当の受給対象とする方が良いと考えます。

改善案

この条文に関する改善案はありません。

参考判例

沼津交通事件 最二小判 平成5年6月25日

事件概要

労働者A(原告)が勤務する会社では、4100円の皆勤手当(年によって異なる)が設けられていた。
1日欠勤した場合は半額に、2日以上欠勤した場合は不支給であり、年次有給休暇も欠勤扱いとなっていた。
この規定については労働協約で定められており、組合も了承していた。
労働者Aは、この不利益な扱いが、労働基準法第39条、134条(現行法では136条)に違反し無効であるとして、減額・不支給分の支払いを求めて提訴した事件。
一審は原告の請求は認められたが、控訴審では原告の請求は退けられたため、労働者Aは最高裁に上告した。

就業規則との関係において

「年次有給休暇の取得を何らかの経済的不利益と結び付ける措置を採ることは、その経営上の合理性を是認できる場合であっても、できるだけ避けるべきである」

と述べつつも、労働基準法136条が訓示的規定であり、会社と労働者間の取り決めまでを否定するものではないとしています。

そして、下記のように述べて、原告の訴えを斥けました。太字は筆者による。

(不利益扱い)その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年次有給休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、年次有給休暇を取得する権利の行使を抑制し、ひいては同法(労働基準法)が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるものでない限り、公序に反して無効となるとすることはできないと解するのが相当である」

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