所定の要件を満たす労働者に対し、法定以上の日数を年次有給休暇として付与  

第22条 (年次有給休暇)

1 採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、10日の年次有給休暇を与える。その後1年間継続勤務するごとに、当該1年間において所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、下の表のとおり勤続 期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。

2 前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、下の表のとおり所定労働日数及び勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。

3  第1項又は第2項の年次有給休暇は、労働者があらかじめ請求する時季に取得させる。ただし、労働者が請求した時季に年次有給休暇を取得させることが事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に取得させることがある。 

4 前項の規定にかかわらず、労働者代表との書面による協定により、各労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日を超える部分について、あらかじめ時季を指定して取得させることがある。

5 第1項又は第2項の年次有給休暇が 10 日以上与えられた労働者に対しては、第3項の規定にかかわらず、付与日から1年以内に、当該労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日について、会社が労働者の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。ただし、労働者が第3項又は第4項の規定による 年次有給休暇を取得した場合においては、当該取得した日数分を5日から控除するものとする。 

6 第1項及び第2項の出勤率の算定に当たっては、下記の期間については出勤したものとして取り扱う。 ① 年次有給休暇を取得した期間 ② 産前産後の休業期間 ③ 育児・介護休業法に基づく育児休業及び介護休業した期間 ④ 業務上の負傷又は疾病により療養のために休業した期間 

7 付与日から1年以内に取得しなかった年次有給休暇は、付与日から2年以内に限り繰り越して取得することができる。 

8 前項について、繰り越された年次有給休暇とその後付与された年次有給休暇のいず れも取得できる場合には、繰り越された年次有給休暇から取得させる。 

9 会社は、毎月の賃金計算締切日における年次有給休暇の残日数を、当該賃金の支払明細書に記載して各労働者に通知する。

条文の目的・存在理由

年次有給休暇は労働基準法第39条に基づく制度です。所定の要件を満たす労働者に対し、法定以上の日数を年次有給休暇として付与しなければいけません。法律に定められた基準以上の年次有給休暇日数を設定し、付与することも可能です。

年次有給休暇制度は、法律で細かく定められています。したがって下記の点に留意しながら就業規則に記載する必要があります。

①8割以上という出勤率の算定について

出勤率計算の分母となるのが全労働日ですが、これは総暦日数(365日もしくは366日)から所定休日を除いた日数です。ただし下記の期間を除きます。

・使用者の責に帰すべき事由による休業日
・不可抗力による休業(天災など)
・正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日

そしてさらに、下記の期間は出勤したものとみなされます。

・業務上の傷病による療養のための休業期間
・産前産後休業の取得期間
・年次有給休暇の取得期間
・育児休業・介護休業法における育児介護休業期間

②付与日数の勤続年数について

法定の付与日数については上記モデル条文の通りです。

注意すべき点は、
出勤率が8割を下回った場合は、有給休暇を付与する必要はありませんが、その8割下回った場合でも勤続年数には通算されるということです。


例えば、2年6ヶ月から3年6ヶ月の間に出勤率が8割を下回ったとしても、3年6ヶ月から4年6ヶ月の間に出勤率が8割を超えた場合は、付与日数は16日になります。

③比例付与について

所定労働時間が30時間未満の労働者(パートタイマー等)に対しても、出勤率8割という条件を満たす限りは年次有給休暇を付与する必要があります。
その場合はモデル条文の通り、労働時間に比例して付与日数を少なくできます。

なお週30時間以上勤務あるいは週5日以上勤務するパートタイマーであれば比例付与ではなく、1項に規定する通常の基準が適用されます。

④年次有給休暇の取得時の賃金について

年次有給休暇時の賃金については、以下の3つの方法のいずれかを選択し、就業規則に記載する必要があります。

⒈平均賃金(直近過去3ヶ月分の平均賃金を使用)
⒉所定労働時間労働した際に支払われる通常賃金
⒊健康保険法に定める標準報酬月額の30分の1相当の金額 (この3の場合は労使協定の締結が必要です)

⑤年5日の年次有給休暇の確実な取得義務について

2019年4月より、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対する年次有給休暇の付与のルールが変わりました。
全ての会社は、年次有給休暇の日数のうち年5日分については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。

ポイントは下記の通りです。

❶年次有給休暇が10日以上付与される労働者が対象
❷使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、取得時季を指定して年次有給休暇 を取得させなければなりません。この時季指定をする際には、労働者の意見を聴取し、できる限り労働者の希望に沿った取得時季にする必要があります。
❸既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者には、使用者による時季指定は必要ありません。また、することもできません。
❹会社は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。
❺休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項です。したがって年次有給休暇の時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載する必要があります。
❻5日分の時季指定取得させなかったり、就業規則への記載が行なわれていない場合は、罰則を受ける可能性があります。

厚生労働省からこの「年5日の年次有給休暇の確実な取得」に関して解説文書が出されています。
https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/img/salaried/000463186.pdf

リスク① 時季変更権に関して

上記モデル条文第3項ただし書によれば、事業主は、労働者の年次有給休暇取得希望日が事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に取得させることができるとしています。
これは労働基準法第39条第5項において明記されている事業主の権限です。しかし、無制限に認められるものではありません。

時季変更権行使が有効とされるには「事業の正常な運営を妨げる」事由が存在するかどうかがポイントとなります。
判断基準として判例は下記の通り述べています。

一般的には当該労働者(年休請求者)の所属する事業場を基準として、事業の規模、内容、当該労働者の担当する作業の内容、性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、時季を同じくして年休を請求する者の人数等諸般の事情を考慮して客観的に、かつ、年休制度の趣旨に反しないよう合理的に決すべきである。また、事由の存否の判断は事前に行なうものであるから、時季変更権行使の時点において事業の正常な運営が阻害される蓋然性があれば足り、結果的に阻害を生じなかつたとしても時季変更権の行使は適法であると解するのが相当である。」

なお時季変更権の濫用と認定された場合、労働基準法第119条に基づき6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる場合もあります。

リスク② 一斉付与に関して

入社日が労働者ごとに異なる場合は、勤続年数の把握が煩雑になります。
その際に有用な方法が一斉付与です。4月1日、10月1日が基準日として多くの企業で設定されています。

なおこの基準日は1年間の中でいくつでも指定できます。一斉付与を行う際に気をつけなければいけないのは、下記の2点です。

①勤続年数の算定期間について

 ポイントは、「入社6か月後に10日、その1年後に11日を付与する」という法定基準を下回らないことです。

例えば一斉付与日に合わせるために、ある労働者が入社から10ヶ月経って初めて年次有給休暇が付与されるというのは、就業規則に記載があったとしても法令違反となります。

また入社後6ヶ月経過以前に付与する場合に短縮された期間で、出勤率を計算するのは違法となります。
短縮された期間は全期間出勤したものとみなした上で、出勤率を算出する必要があります。下記が例です。

例)1月1日入社の労働者に対し、本来の6ヶ月経過後の初日7月1日でなく、4月1日に年次有給休暇を付与するケース

②労働者間の不公平感の解消について

4月1日のみ一斉付与する会社の場合、入社日が1ヶ月異なるだけで下記のような差が発生します。

9月1日入社:6ヶ月経過後の3月1日に10日、さらに翌月4月1日に11日付与
10月1日入社:6ヶ月経過後の4月1日に10日、翌年4月1日に11日付与

1ヶ月早く入社しただけで、4月1日時点で多く年次有給休暇を保持することになってしまいます。
この勤続年数管理の煩雑さを避けつつ不公平感を軽減させるために、下記のような対応をとっている企業もあります。

・付与日を年に2回設ける。
・入社した時点で会社独自の有給休暇を付与する。

改善案

第22条 (年次有給休暇)

1 年次有給休暇の付与日は4月1日とする。入社後6ヶ月以内の労働者は、入社日から6ヶ月が経過した日を初回付与日とする。

2 2回目以降の付与日については、入社6ヶ月経過後に初めて到来する4月1日を1年6ヶ月経過した日とみなす。それ以降については、下の表のとおり勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。

参考判例

名古屋鉄道郵便局事件 名古屋地判 昭和59年4月27日

事件概要

年次有給休暇取得の申し出をした郵便局職員(原告)に対し、会社側は時季変更権を行使した。
それでも当日当該職員が欠勤したため減給1ヶ月の処分となった。
当該欠勤は適法な年休取得に基づくものであり減給処分は理由がないとして、減給処分の取消を求めた事件。

就業規則との関係において

時季変更権に関し、判決では下記のように述べています。太字化は筆者による。

「労働者から年休の時季指定がなされた場合、使用者は、労働力の配置変更や代替要員の確保につき、労働協約、就業規則、内規等により行なうことができると定められ、あるいは行なうよう指導されていた方法について逐次検討すべきであり、また、他に容易に検討しうる方法があれば、それについても検討をすべきであり、これらの努力をすることもなくなされた時季変更権の行使は違法と解すべきである。

業務の代替要員確保の努力を会社側は怠ったと認定され、当該処分は違法と判断されました。

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