家庭での学びを活かすと、会社の人間関係もうまくいく

美味しい表現はいろいろあっても、「まずい」 は一言で終わってしまう

テレビで食レポを見ていると、「お肉がジューシーで」とか「優しい味がする」、「塩味が絶妙」などといったいろいろな表現がある。

美味しいということを表現するのに、いろいろな伝え方をしているということになる。

これはとある書籍に書いてあったことだが、逆に「まずい」ということを考えると、面白いことがわかる。

世の中に「まずい」という味は存在しない。

冷静に考えてみればあたり前だ。

しかし、私たちは「美味しい」に関しては、具体的な表現をいつも考えてしまうのに、「まずい」に関しては、あまりに無関心である。

例えば、家庭で奥さんの手料理が出てきたとき、あまり自分の好みと合わなかったとする。

このときに、「まずい」と実際に言う人は少ないだろう。

それは「まずい」と言っても単に喧嘩になるだけで、次の料理が美味しくなるわけではないことがわかっているからである。

「まずい」の代わりに「ちょっと塩の量が多すぎるかな」とか「ちょっと焼きすぎかな」とか、具体的に改善すべきことを伝えるはずである。

それが唯一の改善方法だからである。

これは人材育成にそのまま当てはまるのではないかと思う。

例えば、仕事できる人を褒めようとすると、「メールが丁寧」「計算が早い」「Excelの表計算が的確」「説明が上手い」といった具体的なことが浮かんでくるだろう。

一方「仕事できない」部下を注意しようとすると、「君は仕事ができない」という一言で済ませて、「ちゃんと仕事するように!」「もっとしっかりして!」「心構えがなっていない」「考え方が甘い」と抽象的な表現になることが多い。

先ほどの「まずいという味はない」ということから考えると、実は「仕事が出来ない」という人はいないと言えるかもしれない。

それは仕事ができないのではなく、メールの返信が雑だったり、説明が下手だったりするだけなのかもしれない。

そこまで具体的にわかると、注意の方法も変わってくる。

「もっとしっかりして!」と注意するのではなく、「メールの返信は、自分で一度読み直してから送信して」と言うほうが、何をどう変えていけばいいのか伝わってくる。

好きなことが一緒よりも、「嫌いなことが一致しない」 ことに気を付けたほうがいい

夫婦生活が上手くいくコツというものは、世の中にいろいろある。

「共通の趣味がある」「好きなことが一緒」など、とても結構なことだと思う。

ただ、好きなことが一緒よりも、嫌いものが同じほうが、実は上手くいくらしい。

具体的には、「タバコが嫌い」「ギャンブルが嫌い」などである。

片方がタバコ好きであっても、片方が嫌いであれば、夫婦生活の大きな障害となる。

となると、まずは相手の「嫌いなもの、嫌いなこと」を聞いておくことが大事になってくる。

これは、夫婦関係だけに限らない。

会社の採用を恋愛に例えることがあるが、「嫌いなことが同じほうが上手くいく」という考えは、まさに採用し定着率を上げて、人材育成していくためにも必要な視点である。具体的には「嫌いなこと」を「許容できないこと」として考えると、腑に落ちる。

採用面接のときには、会社のいいところを伝えることは、もちろん重要だが、会社のマイナスなことを伝えて、応募者の「許容できないこと」を聞いておくことも重要である。

例えば、少数精鋭で給与が高い代わりに、「会社の建物が古くて、トイレが汚い」といったマイナス面があったとする。

こうした場合、給与が高いというプラスの条件があったとしても、「トイレが汚い」といったマイナスを許容できなければ、いずれ辞めてしまう。

それを防ぐためにも、「許容できないものがあるか」という視点で採用面接することは、とても大事である。

もちろん、許容できないものがあるかをヒヤリングすることは簡単ではないが。

以前、「ハーズバーグの二要因理論」というものを、本紙でも説明した。

これは衛生要因といって、「仕事の不満に関わるものが改善されていても、満足にはつながらないが、整備されていないと不満を増長する」といったものだ。

つまり「トイレがきれい」な状態であっても満足感が高まるわけではないが、「トイレが汚い」と不満が増長するという考え方である。

そうであれば、採用面接では、会社のマイナス面が許容できるか確認しておくことはもちろん、今いるスタッフの、不満をヒヤリングして改善することは、離職率の改善につながるかもしれない。