業務における行為規範原則を明示します
第10条 (服務)
労働者は、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、会社の指示命令に従い、職務能率の向上及び職場秩序の維持に努めなければならない。
条文の目的・存在理由
会社業務における労働者の行為規範原則を示します。
服務規律は、就業規則への記載が法律上義務付けられている事項ではありません。
確かに服務規律がなくても十分社内秩序が維持されている場合は、記載の必要性はないかもしれません。
しかし業績の向上等に伴って多種多様な労働者を抱えることとなった場合、組織的に労働力を活用するには最低限の規律は必要でしょう。
また、後述する懲戒に関する条文で「就業規則の服務規程に違反した時」と記載することで懲戒事由にもなります。
したがって第11条〜18条の一般原則を示すものとして、本条文を設けることをおすすめします。
リスク
本条文に関連するリスクはありません。
改善案
服務規律に関する細かなルールは11条〜18条で定めるため、当該条文では上記条文例のように抽象的な文言で問題ありません。
参考判例
富士重工業事件 最三小判 昭和52年12月13日
事件概要
労働者(上告人ではない)が就業時間中に、業務と関係ない署名活動や、それと関連する運動資金調達目的のハンカチ作成を、上告人らに依頼していた。会社は左記活動が就業規則違反に該当すると判断し、左記活動について上告人に事実調査を行った。
上告人は依頼されたハンカチを作成したことのみを答え、左記活動に関わった者の氏名や活動の詳細については回答を拒否した。
会社は、この回答拒否行為を、服務規律を定める就業規則の規定等に反するとして、譴責処分を行った。
この処分を不服とした上告人が、当該処分の無効確認等を求めて提訴した。
就業規則との関係において
判例では、会社が服務規律を定めることに関して下記のように述べています。
「・・・企業秩序は、企業の存立と事業の円滑な運営の維持のために必要不可欠なものであり、企業は、この企業秩序を維持確保するため、これに必要な諸事項を規則をもつて一般的に定め、あるいは具体的に労働者に指示、命令することができ、また、企業秩序に違反する行為があつた場合には、その違反行為の内容、態様、程度等を明らかにして、乱された企業秩序の回復に必要な業務上の指示、命令を発し、又は違反者に対し制裁として懲戒処分を行うため、事実関係の調査をすることができることは、当然のことといわなければならない。」
一方で、労働者は会社に対し労務提供義務と併せて企業秩序遵守義務その他の義務を負うが、企業の一般的な支配に服するものではないと判断しました。その結果、下記の論理で当該処分は違法無効であると判断されました。
上告人の調査への協力が、労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的であるとは言えない(地位や職種次第では協力義務が生じうるとも述べています)
→ 本件調査に協力する義務がない上告人を、義務がないにもかかわらず懲戒処分としたことは違法無効である。
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