労働基準法上、育児時間と生理休暇は付与しなければいけません
第27条 (育児時間及び生理休暇)
1 1歳に満たない子を養育する女性労働者から請求があったときは、休憩時間のほか1日について2回、1回について30分の育児時間を与える。
2 生理日の就業が著しく困難な女性労働者から請求があったときは、必要な期間休暇を与える。
条文の目的・存在理由
育児時間については労働基準法第67条に、生理休暇については同68条に定めがあります。
さらにモデル条文第25条と同様に育児時間と生理休暇は、絶対的必要記載事項です。
当然のことながら法律に基づく条文であるため就業規則への記載が漏れていたとしても、会社の遵守義務は免れません。
運用時の注意点は下記の通りです。
・労働基準法第34条に定めのある通常の休憩時間と別に与える必要があります。
・2項の生理休暇については、暦日単位のほか半日単位、時間単位でもあっても付与することができます。
・短時間勤務の労働者であっても請求することができますが、1日の所定労働時間が4時間以内の場合は、1回の育児時間付与で足ります。(昭36.1.9基収8996号)
・育児時間休憩は、就業時間の始めと終りに付与することもできます。(労働時間の途中である必要がある通常の休憩とは異なります。)
・育児休憩は、2回に分けて請求することを抑制する趣旨でない限りは、1度に60分与えることも可能です。
・生理休暇は正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイター、契約社員等、非正規労働者も請求できる制度です。
・生理休暇取得については、就業が著しく困難であることを証明する医師の診断書は不要とされています。会社側が証明を必要とする場合でも、上司や同僚の証言程度の簡易な証明で十分です(昭和23年5月5日基発682号、昭和63年3月14日基発150号、婦発47号)。
・生理休暇の付与日数に制限はありません。ただし、有給での付与を制限することは可能です。
リスク① 育児時間および生理休暇のための時間の給与について
育児時間および生理休暇のための時間の給与について一切記載がないため、明記すべきです。
労働基準法上には定めがなく、会社が有給か無給かを決めることができます。
ノーワーク・ノーペイの原則により、記載がなくとも無給として問題はありませんが、周知のためにも明記すべきでしょう。
リスク② 不正取得の防止について
生理休暇については厳格な証明書までは求められないことから、不正が起きる可能性もあります。
したがって不正取得は懲戒処分とすることを明記するだけでなく、生理休暇を有給とする場合もその日数に上限を設けるべきでしょう(例:「月1日を超える分の生理休暇については、無給とする)。
改善案
第26条 (育児時間及び生理休暇)
1 1歳に満たない子を養育する女性労働者から請求があったときは、休憩時間のほか1日について2回、1回について30分の育児時間を与える。
2 生理日の就業が著しく困難な女性労働者から請求があったときは、必要な期間休暇を与える。
3 前1、2項により勤務していなかった時間は無給とする。
4 2項について不正取得を行ったものは懲戒処分の対象とする。
参考判例
岩手県交通事件 盛岡地判 平成8年4月1日
事件概要
原告であるバスガイドが、業務繁忙により出勤要請を受けていた日に偶然生理となったので生理休暇を申請した。
そして夫の運転する自動車に乗車し、深夜遠隔地に旅行し、民謡大会に出場した。
会社側は当該生理休暇を不正取得であるとして、原告に6ヶ月の懲戒休職処分を下した。
原告は、懲戒休職処分を不服として会社を提訴し、処分無効を求めた事件。
就業規則との関係において
判決では下記のように述べています。
「取得者が月経困難症との証拠もなく、生理休暇を取得した経緯、右休暇中の取得者の行動及び休暇を取得しなければ取得したであろう業務の苦痛の程度等から、就業が著しく困難でないと明らかに認められる場合などは、当該生理休暇の取得は不正取得として許されないというべきである。」
その上で、判決では、深夜に遠隔地に出かけ民謡大会に出場したという原告の生理休暇中の行動を考慮されました。
その結果、生理日のため就業が著しく困難であったとはいえないとしました。
ただし、6ヶ月の懲戒休職処分は重すぎるとして3ヶ月程度が有効であるとされました。
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