労働時間と休憩時間を明らかにします
第19条 (労働時間及び休憩時間)
1日の労働時間を8時間とし、完全週休2日制を採用する場合の規程例 *1ヶ月単位の変形労働時間制については後述しています。1 労働時間は、1週間については40時間、1日については8時間とする。
2 始業・終業の時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。この場合、__が前日までに労働者に通知する。
①一般勤務
始業・終業時刻 休憩時間
始業 午前 時 分 時 分から 時 分まで
終業 午後 時 分
②交替勤務
(イ)1番(日勤)
始業・終業時刻 休憩時間
始業 午前 時 分 時 分から 時 分まで
終業 午後 時 分
(ロ)2番(準夜勤)
始業・終業時刻 休憩時間
始業 午前 時 分 時 分から 時 分まで
終業 午後 時 分
(ハ)3番(夜勤)
始業・終業時刻 休憩時間
始業 午前 時 分 時 分から 時 分まで
終業 午後 時 分
3 交替勤務における各労働者の勤務は、別に定めるシフト表により、前月の 日までに 各労働者に通知する。
4 交替勤務における就業番は原則として 日ごとに 番を 番に、
番を 番に、 番を 番に転換する。
5 一般勤務から交替勤務へ、交替勤務から一般勤務への勤務形態の変更は、原則として休日 又は非番明けに行うものとし、前月の_日前までに が労働者に通知する。
条文の目的・存在理由
始業及び終業の時刻、休憩時間、就業時転換に関する事項は、絶対的必要記載事項として就業規則に必ず記載しなければいけません。
法定事項について
・「法定労働時間:1日8時間 1週40時間」を超えてはならない。
*商業、映画・演劇業、保険衛生業、接客娯楽業で、常時10人未満の事業場における1週間の法定労働時間は44時間
*法定労働時間:労働基準法で定められている労働時間
所定労働時間:会社が法定労働時間を超えない範囲で定める労働時間
・必要な休憩時間について
6時間 < 労働時間 ≦ 8時間 45分以上の休憩
8時間 < 労働時間 1時間以上の休憩
・原則として休憩は事業場内で一斉に与える必要があります。一斉に与えなくても良い場合は下記の2つです。
①労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、そのような労働組合が存在しない場合は労働者の過半数を代表するものと会社が、休憩を一斉取得としない旨について書面で労使協定を結んでいる場合
②下記の業種に当てはまる場合
官公署、接客娯楽業、通信業、映画・演劇業、金融・広告業、運輸交通業、保健衛生業、 商業
リスク① 始業と終業時刻の変更について
業種によっては、季節等に応じて始業と終業時刻を変更させた方が良い場合があります。その場合に気をつけなければいけないのは、必ずモデル条文のように変更の可能性について言及するということです。始業と終業の時刻は、重要な労働条件であり、労使双方を拘束します。したがって言及がなければ容易に変更できません。
リスク② 始業と終業時刻の定義について
始業と終業の時刻に対する認識が、労使間で相違していることがあり得ます。その場合、始業時刻と同時に業務に取り掛かれなくても、タイムカード打刻さえすれば問題ないと考える労働者が出てくる可能性もあります。このような状況を放置することは、給与額の観点からも不合理なだけでなく、他の労働者の士気にも影響します。したがって始業・終業時刻の定義は明記すべきです。
改善案
第19条 (労働時間及び休憩時間)
1 労働時間は、1週間については40時間、1日については8時間とする。
2 始業・終業の時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。この場合、___が前日までに労働者に通知する。ここでいう始業時刻とは、会社の指揮命令に基づき、所定の就業場所で業務を開始する時刻をいう。また終業時刻とは、会社の指揮命令下から外れ、業務を終了した時刻をいう。
以下モデル条文と同文
参考判例
三菱重工業長崎造船所事件 最一小判 平成12年3月9日
事件概要
会社は、所定の作業場での業務開始から終了までを労働時間とするように就業規則を改正した。
しかし、その業務開始前と終了後において、労働者は、会社指定場所での着替、保護具装着や手洗いなどが義務付けられていた。
さらに違反した場合の懲戒処分まで定められていた。
そこで労働者A(原告)は、上記着替等の時間や体操場所までの移動時間は、会社の指揮命令下にあると主張し、法定労働時間超過分の割増賃金支払を会社に請求した。
また、会社が一方的に始業終業時刻を上記のように改定したことは、不利益変更に当たるとの主張も行った事件。
就業規則との関係において
判決では、労働時間にあたるかどうかは、会社の指揮命令下にあるか否かを基準に判断すべきと述べました。
この基準をもとに、(会社が定める)始業前と終業後の各行為時間が、労働時間に当たるかどうかが判断されました。
会社の入場から更衣室までの移動時間、休憩時間や作業終了後の時間は労働時間ではないとされました。
しかし、それ以外の着替えや体操場所までの移動時間などは全て労働時間とであると判断され、割増賃金の支払いが会社に命ぜられました。
1か月単位の変形労働時間制(隔週週休2日制を採用する場合)の規程例
第19条 (労働時間及び休憩時間)
1 1週間の所定労働時間は、平成_年_月_日を起算日として、2週間ごとに平均して、1週間当たり40時間とする。
2 1日の所定労働時間は、_時間__分とする。
3 始業・終業の時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。この場合において業務の都合によるときは、___が前日までに通知する。
1か月単位の変形労働時間制は、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場(※1)は44時間)以内となるように、労働日および労働日ごとの労働時間を設定することにより、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えたりすることが可能になる制度です(労働基準法第32条の2)。
厚生労働省作成リーフレットhttps://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-2.pdf
(※1)常時使⽤する労働者数が10人未満の商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業」
条文の目的・存在理由
1ヶ月単位の変形労働制を導入する際に必要となる条文です。
導入にあたっては就業規則か労使協定に記載する必要があります。
しかし労使協定には免罰効果しかなく労働者に労働を義務付けることはできないため、就業規則に記載することが一般的です。
就業規則もしくは労使協定で定める必要がある事項は下記の通りです。
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