妊娠をした従業員がいます。産前産後休業に入るまでの間における労務管理上の注意点はありますか?当事業所には夜勤業務があります。

回答

労働基準法では、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性を「妊産婦」と呼び、母体保護を目的とした規定が設けられています。

規定はありますが、妊産婦からの請求がなければ、本人の希望に沿って妊娠前と同様の働き方を継続することは可能です。

しかし、産前産後休業までの間に、妊産婦本人から請求があった場合には、下記の点で事業主は対応を求められます。

・他の軽易な業務への転換が必要となる(詳しくは下記にて解説)

・労働時間等に制限が必要となる(詳しくは下記にて解説)

なお、労働者が、「労働基準法第41条該当者(管理監督者等)」や「高度プロフェッショナル制度対象労働者」である場合には、適用されない規定もあります(詳しくは下記にて解説)。

解説

労働時間等における制限

労働基準法第66条 (太字化は筆者による)
①使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第32条の2第1項、第32条の4第1項及び第32条の5第1項の規定にかかわらず、1週間について第32条第1項の労働時間、1日について同条第2項の労働時間を超えて労働させてはならない。
 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第33条第1項及び第3項並びに第36条第1項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。
 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。

まとめると下記の通りです。前述の通り、妊産婦からの請求があった場合に適用される規定です

変形労働時間制の制限規定時間外・休日労働の制限規定深夜業の制限規定
労働基準法第41条該当者(管理監督者等)
高度プロフェッショナル制度対象者
適用されない
→妊娠前と変わらない
適用されない
→妊娠前と変わらない
適用される
→深夜業はさせてはならない
上記以外適用される
→フレックスタイム制以外の変形労働時間制を採用していても、1週間・1日の法定労働時間を超えて働かせてはいけない。
適用される
→いかなる場合であっても時間外労働や休日労働をさせてはいけない。
適用される
→深夜業はさせてはならない

注意点

ある妊産婦が、労働基準法第41条第2項上の「監督若しくは管理の地位にある者」に、そもそも該当するのかということも問題になり得ます。

ある妊産婦が社内で管理職という位置付けで扱われているものの、労働時間の裁量がほとんどなかったとします。
その場合、労働基準法第41条第2項上の「監督若しくは管理の地位にある者」には該当しないと判断される可能性があります。
該当しないとなれば、労働時間等における制限の規定が、当然に適用されます。

他の軽易な業務への転換

労働基準法第65条第3項 (太字化は筆者による)
使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

他の軽易な業務への転換も、妊産婦の請求が必要です。
当然上記の労働時間等における制限における請求と併用できます。

なお、軽易な業務がない場合、新たに軽易な業務を創設までして転換をする必要はありません。
さらに、軽易な業務がなく、妊産婦が休業を選択した場合、事業主に休業の責任はないため休業手当を支払う必要はないとされています。

関連事項

産前産後休業

労働基準法第65条 (産前産後)
① 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

ポイントは下記の通りです。

・出産当日は産前6週間に含まれる。
・出産日が遅れた場合、産前6週間は出産予定日を基準にし、産後8週間は実際の出産日を基準に計算する。
・産前休業は、妊産婦からの請求がなければ出産日まで就業させられる。
・産後休業は、産後6週間まではどんな場合でも就業禁止。
・産後6週間経過後に産婦が就業を請求した場合、その者について医師が支障なしと認めた業務には就かせることができる。

育児時間

労働基準法第67条 (育児時間) 
① 生後満一年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。
 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。

ポイントは下記の通りです。

・請求がない場合は、育児時間を付与しなくてよい。
・育児時間は、休憩時間と違い、労働の途中に与えなくても良い。つまり就業時間の終わりに与えても良い。
・1日の労働時間が4時間以内の場合は、1日1回の付与で足りる。
・男性には、当該規定は適用されない。つまり男性に育児時間は与えなくて良い。

関連就業規則解説

第5章 休暇等 第24条 産前産後の休業

第5章 休暇等 第25条 母性健康管理の措置

第5章 休暇等 第26条 育児時間及び生理休暇

第5章 休暇等 第27条 育児・介護休業、子の看護休暇等