有期雇用期間中でも解雇できますか?

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回答

やむを得ない事情があれば解雇は出来ます。
しかし、裁判上の争いに発展した場合、解雇権の濫用として無効となる可能性が高いでしょう。
期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。
また民法第628条では、使用者の都合で契約を解除した場合、使用者は労働者に対して損害賠償責任を負うこととしています。
この場合の賠償額の限度は、契約期間満了までの賃金相当額と考えられています。

雇い止めについて

上記回答にある解雇は契約途中で行うものであり、実際に行うのは非常に難しいでしょう。
一方雇い止めは契約更新せず、契約期間満了をもって労働契約が終了することです。
実際の労務においては雇い止めの方が、実施し得る選択肢と言えます。
この雇い止めの考え方含め、労働契約法の改正について下記パンフレットが発行されています

「労働契約法改正のあらまし」 厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/pamphlet.pdf

解説

関連法令

労働契約法第16条 解雇が無効と認められる場合について(解雇権濫用法理)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

労働契約法第17条1項 有期雇用労働者の解雇について
使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

労働基準法第20条 解雇予告手続きについて
1.使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

2.前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

3.前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。

民法第628条 
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約を解除することができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

解雇が有効と判断されるための条件

上記労働基準法第20条における解雇予告手続きをしっかりと行った上で、当該解雇理由が、上記労働契約法第17条1項にいう『やむを得ない事由』に当たるかどうかが最大のポイントとなります。
行政通達では、「やむを得ない事由」があるか否かは、個別具体的な事案に応じて判断されると前置きした上で下記のように述べています。

契約期間は労働者及び使用者が合意により決定したものであり、遵守されるべきものであることから、「やむを得ない事由」があると認められる場合は、解雇権濫用法理における「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」以外の場合よりも狭いと解されるものである。

(基発0810第2号平成24年8月10日) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002hc65-att/2r9852000002hc8t.pdf

ここでいう解雇権濫用法理とは上記労働契約法第16条のことです。
つまり有期雇用契約期間中の解雇における「やむを得ない事由」とされる範囲は、期間の定めのない労働契約(無期雇用)の場合より狭いのです。

関連判例

安川電機八幡工場事件(福岡地裁小倉支判 平成16年5月11日)

受注高が半減するなど経営環境が悪化し10年以上契約更新を繰り返してきた有期雇用労働者2名を整理解雇。
当該労働者に関する労務関係費は会社の事業経費のわずかな部分であるとし、解雇は無効とされた。
雇い止めについても権利の濫用として無効とされた。

X学園事件(さいたま地判 平成26年4月22日) 

日報不提出などの業務命令違反で有期雇用契約期間中に解雇。
即座に雇用を終了せざるを得ない特別の重大事由はないとして解雇は無効とされたが、雇い止めは有効とされた。

関連就業規則解説

厚労省就業規則完全解説 第7章 定年、退職及び解雇 第51条 解雇