第4章 労働時間、休憩及び休日 第20条 休日

会社の休日を明らかにします

第20条 (休日)

1 休日は、次のとおりとする。
  ①土曜日及び日曜日
  ②国民の祝日(日曜日と重なったときは翌日)
  ③年末年始(12月  日~1月  日)
  ④夏季休日(  月  日~  月  日)
  ⑤その他会社が指定する日

2 業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ前項の休日を他の日と振り替えることがある。

条文の目的・存在理由

「休日」は、就業規則の絶対的必要記載事項(=定めの有無に関わらず就業規則に記載しなければいけない事項)です。
労働者に対し振替休日や代休を命ずる場合にも、就業規則上の根拠が必要です。
そのために上記モデル条文第2項は必要となります。以下用語について説明します。

休日

休日は,0時から24時まで(暦日)の24時間のことを指します。
ただし、シフト制などの交代制の場合は、下記の要件を満たせば、暦日単位でなく、継続24時間を与えればよいとされています(行政通達昭和63年3月14日基発150号)。

① 就業規則等にシフトによる交代制であることが定められ、制度運用されていること
② シフトの交代が規則的に定められていて、その都度設定されるものではないこと

休暇

契約に基づく労働義務を課されている所定労働日において、労働義務を免除された日または時間を指します。(例:年次有給休暇・慶弔休暇など)
本来ある労働義務を免除された日や時間という点がポイントです。

法定休日

・労働基準法第35条に基づき、会社が必ず与えなければいけない休日
・法定休日に働かせる場合の賃金の割増率は3割5分以上
・法定休日労働は休日労働に当たるため、時間外労働とはなりません。

所定休日

・法定休日とは別に会社が独自に定める休日
・所定休日に働かせる場合の賃金の割増率は2割5分以上
・所定休日における休日労働(=法定休日以外の休日労働)は、時間外労働に当たります。
 したがって、所定休日労働を含めた時間外労働が60時間を超えた場合は、超過時間に対する割増賃金率は50%となります。

振替休日

・労働日と休日を事前に振り替えることによる休日
・元々の法定休日に働かせても、法定休日労働の割増賃金は発生しません。(1日8時間あるいは週40時間を超えることによる時間外手当の割増賃金は発生します)

代休

・休日労働がされた後に、その代償として他の労働日を休日にすることによる休日
・この場合、休日労働した事実は消えません。したがって法定休日に労働させた場合には、法定休日労働の割増賃金率が適用されます。

リスク① 法定休日と所定休日の明記について

法定休日は、どの曜日に与えても問題ありませんし、特定させることも義務付けられていません。
行政通達によれば、会社ごとに特定することを要求しているものの、必須とはしていません(行政通達[昭和63.3.14基発150])。
会社側にとって法定休日を特定することで生じるメリットとデメリットは下記の通りです。

メリットデメリット
法定休日を特定する・労働時間管理や給与計算上の管理がしやすくなる
・割増賃金に対する労使間の認識差異がなくなる
週休2日制の企業で、特定された法定休日に働かせた場合の割増賃金率は35%となる
法定休日を特定しない労働時間管理や給与計算上の管理が煩雑になる週休2日制の企業で所定休日に働かせても、別の所定休日を休ませていれば、週40時間を上回った部分に対する時間外手当としての2割50%以上が割増賃金率となる

注意

働き方改革関連法案の成立により、2023年4月より中小企業に適用される「月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率」は、50%となります(大企業は既に施行済)。したがって時間外労働が60時間を超えるようであれば、割増賃金率50%の時間外労働としてよりも、割増賃金率35%の法定休日労働として働かせた方が、支払い給与が少なく済むということになります。

法定休日を特定した方が良いか否かの判断のポイントは、下記の通りです。

・労働時間(残業時間含む)がどれくらいか
・休日労働実施日が予測可能かどうか
・労使間の関係は良好か

リスク② 年間所定休日日数が残業代に影響を与える

残業代の計算方法は下記の通りです。

残業代 = 月給 ÷ 月平均所定労働時間 × 割増率 × 時間外労働時間数

上記計算式によれば、月平均所定労働時間が少ないほど残業代は大きくなりますが、この月平均所定労働時間の求め方は、下記の通りです。

(365(日)-年間所定休日数 )×1日の所定労働時間 ÷12(ヶ月)


したがって、年間所定休日の日数によって残業代の単価が変わってくるということになります(年間所定休日が多いほど月平均所定労働時間は少なくなります)。会社の経営状況に応じた休日日数を定める必要があります。

改善案

第20条 (休日)

1 休日は、次のとおりとする。
  ①土曜日及び日曜日
  ②国民の祝日(日曜日と重なったときは翌日)
  ③年末年始(12月  日~1月  日)
  ④夏季休日(  月  日~  月  日)
  ⑤その他会社が指定する日

2 業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ前項の休日を他の日と振り替えることがある。

*法定休日を特定する場合
3 法定休日は、◯曜日とする。

法定休日を特定しない場合
3 本条第一項の休日のうち、法定休日を上回る休日は所定休日とする。

参考判例

日本マクドナルド割増賃金請求事件 東京地判 平成20年1月28日

事件概要

日本マクドナルドに所属する店長A(原告)は、管理監督者として扱われており割増賃金が支払われていませんでした。
店長Aは、自身の処遇実態は管理監督者ではないとして、未払いの割増賃金を求めて提訴しました。

就業規則との関係において

本事件は、原告が管理監督者に該当するか否かを巡って争われた事件として有名ですが、下記のように就業規則等で特定されていない法定休日についても言及しています。太字化は筆者による。

『・・・就業規則上、店長の休日を特定する規定はないが,使用者は,労働者に対し、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないから(労働基準法35条1項)、別紙勤務状況一覧表(認定)のうち、日曜から土曜までの暦週において,1回も休日が与えられていない場合には,原告の主張のとおり,その最終日である土曜日の勤務を休日労働として認めるのが相当である

一方で、HSBCサービシーズ・ジャパンリミテッド賃金請求事件(東京地判 平成23年12月27日)では、土日休みの週休2日制のうち日曜日が法定休日であると判断されました。

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