第5章 休暇等 第26条 母性健康管理の措置

男女雇用機会均等法において、事業主は母性健康管理が義務付けられています

第26条  (母性健康管理の措置) 

1 妊娠中又は出産後1年を経過しない女性労働者から、所定労働時間内に、母子保健法(昭和40年法律第141号)に基づく保健指導又は健康診査を受けるために申出があったときは、次の範囲で時間内通院を認める。 

 ① 産前の場合 
  妊娠23週まで・・・・・・・・4週に1回 
  妊娠24週から35週まで ・・・2週に1回  
  妊娠36週から出産まで ・・・・1週に1回
  ただし、医師又は助産師(以下「医師等」という。)がこれと異なる指示をしたときには、その指示により必要な時間 
② 産後(1年以内)の場合 医師等の指示により必要な時間 

2 妊娠中又は出産後1年を経過しない女性労働者から、保健指導又は健康診査に基づき勤務時間等について医師等の指導を受けた旨申出があった場合、次の措置を講ずる。 

 ①妊娠中の通勤緩和措置として、通勤時の混雑を避けるよう指導された場合は、 原則として_時間の勤務時間の短縮又は_時間以内の時差出勤を認める。 
 ②妊娠中の休憩時間について指導された場合は、適宜休憩時間の延長や休憩の回数を増やす。 
 ③妊娠中又は出産後の女性労働者が、その症状等に関して指導された場合は、医師等の指導事項を遵守するための作業の軽減や勤務時間の短縮、休業等の措置をとる。

条文の目的・存在理由

男女雇用機会均等法第12条・13条1項において、事業主は母性健康管理が義務付けられています。
この母性健康管理は、妊産婦(妊娠中あるいは産後1年を経過しない女性)が保健指導や健康診査を受診するための時間を確保することをいいます。
上記モデル条文は、法律で定められた基準であるため、これを下回るような制度は法令違反となります。

なお時間を確保するということはすなわち「休暇」にほかならないため、絶対的必要記載事項であり記載は必須です。
当然のことながら、就業規則への記載が漏れていたとしても、法律に義務付けられた制度であるため、事業主は義務を免れません。

リスク 母性健康管理のための時間の給与について

上記モデル条文には母性健康管理のための時間の給与について一切記載がないため、明記すべきです。
労働基準法上は定めがなく、会社が有給か無給かを決めることができます。
ノーワーク・ノーペイの原則により、記載がなくとも無給として問題はありませんが、周知のためにも明記すべきでしょう。

改善案

第25条  (母性健康管理の措置) 

1 妊娠中又は出産後1年を経過しない女性労働者から、所定労働時間内に、母子保健法(昭和40年法律第141号)に基づく保健指導又は健康診査を受けるために申出があったときは、次の範囲で時間内通院を認める。 

 ① 産前の場合 
  妊娠23週まで・・・・・・・・4週に1回 
  妊娠24週から35週まで ・・・2週に1回  
  妊娠36週から出産まで ・・・・1週に1回
  ただし、医師又は助産師(以下「医師等」という。)がこれと異なる指示をしたときには、その指示により必要な時間 
② 産後(1年以内)の場合 医師等の指示により必要な時間 

2 妊娠中又は出産後1年を経過しない女性労働者から、保健指導又は健康診査に基づき勤務時間等について医師等の指導を受けた旨申出があった場合、次の措置を講ずる。 

 ①妊娠中の通勤緩和措置として、通勤時の混雑を避けるよう指導された場合は、 原則として_時間の勤務時間の短縮又は_時間以内の時差出勤を認める。 
 ②妊娠中の休憩時間について指導された場合は、適宜休憩時間の延長や休憩の回数を増やす。 
 ③妊娠中又は出産後の女性労働者が、その症状等に関して指導された場合は、医師等の指導事項を遵守するための作業の軽減や勤務時間の短縮、休業等の措置をとる。

3 前1、2項により勤務していなかった時間は無給とする。

参考判例

母性健康管理の措置に関する判例はありませんが、マタニティハラスメントが認定され、事業主側が敗訴した判例は多く存在します。
当該条文は事業主が正確に遵守すべき重要な条文と言えます。

広島中央保健生協事件 最一小判 平成26年10月23日

軽易業務に転換された妊婦労働者は副主任から外される降格処分を受けた。
その後育児休業終了後も副主任に任ぜられませんでした。
この降格処分自体が、違法かつ無効であると判断されました。

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