業務中に怪我をした労働者がいます。当該労働者になるべく早く労災の休業補償給付を渡す方法はないのでしょうか。

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回答

受任者払い制度を検討してはいかがでしょうか。

受任者払い制度は、

休業補償給付が労働者本人に支給される前に、会社がその分を立て替えて支給すること

を可能とする制度です。

そして、休業補償給付の承認がされたのちに、会社にその休業補償給付が振り込まれることとなります。

労働者災害補償保険法における休業補償給付における必ず押さえておきたいポイントは下記の通りです。

  • 業務上のケガや病気が原因で働けない状況にあること *業務外であれば対象外です。
  • 働けなかった過去の期間分を申請できます。例えば4月20日に怪我をして、5月1日に休業補償申請できるのは、4月末までの過去分となります。全治6ヶ月とわかっていても未来の分をあらかじめ申請することはできません。
  • 待機期間が3日(不連続でも可)であり、この3日分は事業主が補償しなければいけません。
  • 申請してもすぐにお金が振り込まれるわけではなく、労働基準監督署の審査があるため、数ヶ月かかることも珍しくありません。

解説

必要な書類

必要な書類は下記の2つです。いずれも厚生労働省のウェブサイトにリンクされています。

「休業補償給付支給請求書」は、医師の証明を記入してもらう箇所があります。また「受任者払に係る届」は、事業主と労働者それぞれが記入等する箇所があります。

受任者払い制度利用の流れ

受任者払い制度の利用の流れは下記の通りです。

繰り返しになりますが、休業補償額に相当する分を、先に労働者にお金を支給することが必要です。

受任者払い制度の利用の流れ
  1. 業務上の怪我や病気が発生
  2. 労災事故発生してから待機期間3日分は、事業主が休業補償しなければいけません(労働基準法第76条)。
    4日目以降が労災の休業補償の対象となります。
  3. 過去の期間に対して、医師に働けない状態にあったことの証明(休業補償給付支給請求書(様式8号))をもらう。上記証明期間に対応する休業補償額を計算し、本人に支給する。
  4. 本人と事業主で、受任者払に係る届を記入する。
    *主な目的は、労働者が確実にお金を受け取ったことの証明です。
  5. 休業補償給付支給請求書と受任者払に係る届を、管轄の労働基準監督署に提出する
  6. 労働基準監督署が審査をし、後日事業主に休業補償額が振り込まれる。

休業中の他の注意事項

休業中であっても、健康保険と厚生年金保険料、住民税は支払続けなければいけません。
*雇用保険料は、賃金が発生しないので、保険料も発生しません。

そのため、上記保険料については何らかの形で、本人から会社に渡してもらう必要があります

働くことができずに金銭的余裕もないケースでは、今回紹介した受任者払い制度を選択肢として考えてみてください。