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回答
必ずしも「時間給×所定労働時間数」を支払う必要はなく、他の計算方法を選択することができます。
労働基準法第39条によれば、年次有給休暇中における賃金について、下記3つから選ぶことができます。
- 平均賃金
- 所定労働時間労働した場合の賃金
- 標準報酬月額の30分の1(労使協定が必要で、利用される事業所はあまりありません)
もっとも一般的で、計算方法が楽なのは、2の「所定労働時間労働した場合の賃金」です。
1日の実際の労働時間が所定労働時間に満たないことが多いのであれば、下記解説を参考に1の平均賃金を選択することも検討してみても良いでしょう。
ただし、労働者や事例ごとに計算方法を変えることはできない点には注意が必要です(月給制労働者と時給制労働者で計算方法を変えることは可能です)。
事業所としての方針を決め、就業規則に記載することが必要です。
解説
平均賃金による年次有給休暇中の賃金計算方法
平均賃金による年次有給休暇中の賃金計算は、「平均賃金✖️年次有給休暇の使用日数」です。
労働基準法第12条において平均賃金の計算方法が定められています。下記①原則と②最低保障額の高い方となります。
*平均賃金は、年次有給休暇だけでなく、休業手当や解雇予告手当を算出するの場面などでも使用します。
下記計算式は労働基準法第12条上の「算定すべき事由」を「年次有給休暇使用日」と置き換えています。
①(年次有給休暇使用日以前3ヵ月間に支払われた賃金総額) ÷ (年次有給休暇以前3ヵ月の総日数)
②(年次有給休暇使用日以前3ヵ月間に支払われた賃金総額) ÷ (年次有給休暇以前3ヵ月の総労働日数)✖️ 60%
年次有給休暇使用日以前3ヶ月の考え方について
年次有給休暇取得日は含まず、その前日からさかのぼって3か月となります。
多くの会社では賃金締切日があり、その場合は直前の賃金締切日からさかのぼって3か月となります。
賃金締切日に年次有給休暇を利用した場合は、その前の締切日からさかのぼります。
下記は、計算例です。
4月給与 | 80,000円 | 出勤7日 | 暦日30日 |
5月給与 | 110,000円 | 出勤12日 | 暦日31日 |
6月給与 | 60,000円 | 出勤8日 | 暦日30日 |
合計 | 250,000円 | 27日 | 91日 |
この場合の平均賃金は
① 250000円 ÷ 91日 = 2747.25円
② 250000円 ÷ 27日 × 60% = 5555.55円
の高いほうである②5555.55円を採用することになります。
関連法令・行政通達
労働基準法第39条第9項(年次有給休暇)
使用者は、第1項から第3項までの規定による有給休暇の期間又は第4項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。
労働基準法第12条第(平均賃金)
この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3ヶ月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。
一 賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60
二 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額
労働基準法の一部を改正する法律等の施行について (昭和27年9月20日 基発第675号)
労働基準法第39条関係
(一) 本条は、年次有給休暇の賃金について、平均賃金、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又は健康保険法第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額の三者の選択を認め手続の簡素化を図つたものであること。
(二) 年次有給休暇の賃金の選択は、手続簡素化の見地より認められたものであるから、労働者各人についてその都度使用者の恣意的選択を認めるものではなく、平均賃金と所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金との選択は、就業規則その他によつて予め定めるところにより、又健康保険法第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額の選択は、法第三六条の時間外労働協定と同様の労使協定を行い年次有給休暇の際の賃金としてこれを就業規則に定めておかなければならないこと。又この選択がなされた場合には、必ずその選択された方法による賃金を支払わなければならないこと。