産前産後休業、育児休業、各種給付を整理して理解

出産関連の法律は、近年たびたびルールが変わる分野です。

そのため、人事労務部門の方でさえも、知識があやふやなことも少なくありません。

ここでは、各種制度の詳細へ立ち入らずに、各制度を整理して、概要を理解しましょう。

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用語の整理

1・2の休業制度と、3・4・5の給付は別制度だということをまずは押さえてください。
申請手続きは別にして、事業主が関係するのは1と2です。

  1. 産前産後休業
    女性労働者が取得できる、産前6週間・産後8週間の休業。取得要件に勤続年数は関係ないので、入社1年未満でも取得できます。
  2. 育児休業
    1歳未満の子どもを養育する労働者が、子どもが1歳になるまでの期間(原則)取得できる休業。
    性別に関係なく取得できます。
  3. 出産手当金
    出産日(出産が予定日より後になった場合は、出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの範囲内で、会社を休み給与の支払いがなかった期間に支払われる。
    健康保険(国民健康保険含む)から被保険者(労働者)に支払われる。
  4. 出産育児一時金
    被保険者(労働者)及びその被扶養者が出産された時に、1児につき所定の額が支給される。
    健康保険(国民健康保険含む)から被保険者(労働者)に支払われる。
  5. 育児休業給付
    雇用保険に加入している労働者が育児休業中に、給与が一定以上支払われなくなった場合、雇用保険から給付される。
    雇用保険の被保険者でなければ、給付を受けることはできません。

産前産後休業・育児休業について絶対に押さえておきたいルール

  1. 満1歳未満の子を養育する労働者は、男女を問わず、子が満1歳に達するまでの間、育児休業を取得できる。
    例外)1歳の時点で保育所への入所ができないなどの事情があるときは、最長2歳まで
  2. 下記①②に当てはまる場合以外は、雇用形態に関わらず、育児休業を取得できる。
    ①産まれる子供が1歳6か月になるまでの間に契約が満了することが明らかな場合
    ②労使協定において、雇用期間が1年未満の労働者は、育休取得出来ないとされている場合
  3. 事業主は、業務の繁忙などを理由に、育児休業取得を拒否・時季変更できない。
  4. 事業主は、育児休業の期間中に賃金を支払う義務はない。
    育児休業給付は雇用保険から支給、出産一時金や出産手当金は健康保険から支給するものです。
  5. 事業主は、労働者が育児休業の申出や取得を理由に、解雇などの不利益取扱をしてはいけない。
  6. 産前産後休業中と育児休業中は、事業主が申出をすることで、健康保険料(40歳以上は介護保険料含む)と厚生年金保険料の支払いが免除される。事業主分と労働者分両方とも。健康保険制度の利用(医療費3割負担など)はもちろん可能です。

産前産後休業

  • 産前休業
    出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から、請求すれば取得できます。(労働基準法第65条)
  • 産後休業
    出産の翌日から8週間は就業することができません。ただし、産後6週間を経過後に本人が請求し、医師が認めた場合は就業することができます。(労働基準法第65条)

育児休業

育児休業には下記3種類あります。

  1. 育児休業 *最もスタンダードなもの
  2. パパママ育休プラス
  3. 産後パパ育休(令和4年10月1日から)

取得できる期間は、子供が1歳に達するまでの間が原則であることを覚えた上で、例外を知る方法が最も良いでしょう。

育児休業 *最もスタンダードなもの

男女を問わず、子が1歳に達するまでに分割して原則2回まで取得可能(令和4年10月1日施行)です。

子が1歳を超えても育児休業を続けられる「育児休業の延長」の要件は下記の通りです。

育児休業の延長ができる場合(1歳→1歳6ヶ月、1歳6ヶ月→2歳)
  1. 保育所(無認可含まず)に入所申込みを行なっているが、この1歳誕生日以後の期間には入所できない旨を通知受けた場合。注意)正式に申込みをしていなければいけません
  2. 子供の養育を行なっている配偶者で、子が1歳以後に養育を行う予定だったものが死亡などによって養育できなくなった場合。例)妻が1歳まで養育し、1歳以後は代わりに育児を主に担う予定だった夫が亡くなる場合

1歳の誕生日前日に上記条件に当てはまれば、1歳6ヶ月まで延長できます。

また、1歳6ヶ月の誕生日前日に上記条件に当てはまれば、2歳まで延長できます。

産後パパ育休(令和4年10月1日から) 「産後」と書かれていますが、育児休業の一つです。

子供の誕生後8週間以内に、最大4週間まで出生時育児休業(産後パパ育休)を取得出来ます。
*まず3週、その後1週といったように、最大4週間の範囲内で2回に分割して取得可能

出産後2ヶ月までの間に育児休業を取得しつつ、一定の範囲内で働くこともできるというのが最大の特徴です。

この産後パパ育休を取得せずに、生まれてからすぐに通常の育児休業を取得することもできます。

また産後パパ育休を取得しても、通常の育児休業を取得することもできます。

詳しくは、「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(厚生労働省)」 をご覧ください。

パパママ育休プラス

父母ともに育児休業を取得する場合は、子が1歳2か月に達するまでの間の1年間取得することができます。

例えば、誕生〜1歳までの1年間を母が産休と育休を取得し、0歳2ヶ月〜1歳2ヶ月までの1年間を父が育休を取得するといったような取得の仕方ができます。

注意しなければいけないのは、父と母それぞれ1年2ヶ月取得できるわけではないということです。

父母それぞれ取得できる育児休業期間は、下記を合計して最長1年間です。

  • 出生日以後の産前・産後休業
  • 産後パパ育休(出生時育児休業)
  • 育児休業を合計して最長1年間である点は変更ありません。

このパパママ育休プラスの取得要件は下記の通りです。

パパママ育休プラスの取得要件
  1. 配偶者が子の1歳に達する日以前において育休をしていること
  2. 本人の育休開始予定日が子の1歳の誕生日以前であること
  3. 本人の育児休業予定日が配偶者の育休の初日以降であること

その他の育児支援措置

子の看護休暇 *賃金の支払義務なし

小学校就学前の子を養育する場合に年5日(2人以上であれば年10日)を限度として取得できます。

1日又は時間単位で取得出来ます。

病気やケガをした子供の看護や、通院の付き添いなどのためにあります。

短時間勤務の措置等

3歳に達するまでの子を養育する労働者について、労働者から請求があれば、短時間勤務の措置(1日原則6時間)を講じなければいけません。

ただし、労使協定によって、①入社1年未満の労働者②1週間の所定労働日数が2日以下の労働者を適用除外できます。

時間外労働と深夜労働の制限

小学校就学前の子を養育する場合に、労働者から請求があれば、時間外労働や深夜労働をさせることができません。

ただし、労使協定によって、①入社1年未満の労働者②1週間の所定労働日数が2日以下の労働者③日雇い労働者を適用除外できます。

まとめ

  • 休業制度と給付金は、別の制度です。
    休業は取得出来ても雇用保険からの給付はないといったことは当然あり得ます。
  • 産前産後休業は、女性だけが取得できるものです。
  • 育児休業は、性別に関係なく取得でき、原則は1年間です。
  • 産後パパ育休は、働くことも可能(上限あり)としつつ、生後2ヶ月までの間に取得できるタイプです。
    最大4週間取得でき、さらに4週間を2回に分割して取得もできます。
    産後パパ育休の後に、通常の育児休業も取得出来ます。
    また、産後パパ育休を取得せずに、通常の育児休業を出生後から取得できます。
  • パパママ育休プラスは、夫婦そろって育児休業を取得する場合には、1歳2ヶ月までの間に取得できるものです。
    ただし、父母それぞれ取得できる育児休業期間は、①出生日以後の産前・産後休業②産後パパ育休(出生時育児休業)③育児休業を合計して最長1年間です。