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回答
大まかな理解としては、通常の労働者と労働条件は同一でなければダメであり、もしも同一でないのであればちゃんと客観的で合理的な理由がないといけないということです。
同一労働・同一賃金について理解する第一歩は、
「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」が何か?
を理解することです。
その上で、
- 差別的取り扱いの禁止(均等待遇):
- 不合理な待遇の禁止(均衡待遇について):
の違いを理解すればよいでしょう。
端的に言えば、仕事内容と人事異動のルールが、無期雇用のフルタイム労働者と変わらない短時間・有期雇用労働です。
パートタイム・有期雇用労働法第9条によれば、下記2点を満たすものです。
- 職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者である。
- 職務内容・配置変更の範囲(人事異動等の有無と範囲)が、通常の労働者と同一のもの
(事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において)
詳しくは解説で扱いますが、大まかな理解としては次のようになります。
- 差別的取り扱いの禁止(均等待遇について)
あらゆる労働者の待遇(労働条件)を、通常の労働者と同じにしなければならない - 不合理な待遇の禁止(均衡待遇について)
通常の労働者と待遇に差をつけるのであれば、不合理な相違は許されない
解説
パートタイム・有期雇用労働法および労働者派遣法とは?
同一労働・同一賃金について規定するのは、以下の2つです。
- パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
- 労働者派遣法
2020年4月(2021年4月から中小企業も)から施行されています。
パートタイム・有期雇用労働法 第8条(不合理な待遇の禁止)
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)
パートタイム・有期雇用労働法 第9条 (通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)
事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。
労働者派遣法30条の3、4にも、均等・均衡待遇について規定されていますが、ここでは省略します。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣 … – e-Gov法令検索
差別的取り扱いの禁止
上記パートタイム・有期雇用労働法 第9条に規定されています。
差別的取り扱いが禁止される範囲は、労働者の待遇すべてです。
賃金(賞与や退職金)は、もちろん福利厚生などあらゆる労働条件が含まれます。
事業主に本条違反行為があった場合、不法行為(民法709条)として損害賠償請求の対象となります。
また、民法90条に基づき、控除違反として法律行為(雇用契約など)が無効となります。
ただし、この差別的取扱いが禁止されるのは、あくまで短時間・有期雇用労働者であることを理由としたものです。
したがって、その職務の経験や能力、業績、勤続年数などを理由とした合理的なものであれば、本条違反とはなりません。
合理的な労働条件の差を設けるには、明確な基準が必要です。
厚生労働省によるガイドライン等をご覧ください。
不合理な待遇の禁止
上記パートタイム・有期雇用労働法 第8条のポイントは、下記の通りです。
- 基本給や賞与などの労働条件に対して、それぞれ個別に不合理かどうかを判断する。
*例えば、「賞与だけをみれば不合理だが、総合的には不合理でない」という判断は行わないということです。 - (各種労働条件の)待遇の性質や目的に照らして不合理性を判断する。
この不合理性判断については、厚生労働省は下記のように述べています。
通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間に基本給、賞与、各種手当等の賃金に相違がある場合において、その要因として通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の賃金の決定基準・ルールの相違があるときは、「通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる」等の主観的又は抽象的な説明では足りず、賃金の決定基準・ルールの相違は、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものの客観的及び具体的な実態に照らして、不合理と認められるものであってはならない。
短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針
(平成三十年十二月二十八日)
(厚生労働省告示第四百三十号
本条文によれば、事業主による「将来の役割への期待」といった主観で、差を設けることはできません。
差別的取り扱いの禁止と同様に、客観的な基準を示す必要があります。
厚生労働省によるガイドライン等をご覧ください。
通常の労働者と同視すべきではない労働者に対する扱い
短時間・有期雇用労働者でも、職務内容は同じだが、職務内容・変更の範囲が異なるといった場合もあるでしょう。
このような場合は、通常の労働者と同視すべきではない労働者となります。
しかし、通常の労働者と同視すべきでない短時間・有期雇用労働者に対しても、パートタイム・有期雇用労働法は規定しています。
賃金、教育訓練、福利厚生について下記のように規定しています。
- 賃金
通常の労働者との均衡を考慮しつつ、賃金を決定するように努めなければならない(努力義務)。 - 教育訓練
通常の労働者と職務内容が同じであれば、同じ教育訓練を実施しなければならない。 - 福利厚生施設
通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設であって、健康の保持又は業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省令で定めるものについては、その雇用する短時間・有期雇用労働者に対しても、利用の機会を与えなければならない。
対応策〜具体的にどうすればよいか?〜
この同一労働同一賃金をめぐる問題は、短時間・有期雇用労働者に対し、通常の労働者と全く同じ待遇にすれば解決というものではありません。
経験や能力を無視して賃金だけ上げれば、それは熟練従業員の不公平感という新たな問題を生み出すかもしれません。
そのため、自社の人事制度(賃金、教育訓練、福利厚生)を点検し、労働条件の差異がある場合には、客観的に明確な基準があるかをまずはチェックしてください。
そして間違いなく、キャッシュフローの観点も加味しなければ、人事制度は整備できないでしょう。
キャッシュフローに関する知見が豊富な当協会に、まずはご相談ください。