就業規則は従業員の同意なく変更できる?同意が不要なケース・変更手順を解説!

同意のイメージ

企業や社員を守るための就業規則は、時代に合わせて変えていくべきものです。しかし、就業規則を従業員の同意なく変更することは可能なのでしょうか。本記事では、就業規則変更の可否に加えて、同意なく変更できる場合、または変更できない場合の条件を解説します。規則を変更するときの手順もまとめてお伝えしますので、就業規則の変更をお考えであれば、ぜひご一読ください。

Contents

就業規則の変更に同意は必要?

結論から申し上げると、変更が合理的であれば同意を得る必要はありません。ただし、「会社の従業員の過半数を代表する者の意見を聴く」ことが労働基準法で定められており、就業規則の変更にあたって意見書の作成は必要になります。意見書を作成するにあたって、必ずしも同意を得る必要はなく、反対意見があったとしても、意見を得た時点で就業規則の変更が可能になります。ちなみに就業規則を初めて作るケースは従業員の同意が一切不要です。

従業員の同意なく就業規則を変更できる3つのケースとは?

従業員の同意なく就業規則を変更できるケースは以下の3つです。

1.法律の改正による変更

たとえば、育児介護休業法の法改正によって、対象家族1人につき通算で93日まで3回の分割取得が可能になり、介護期間は所定外労働(残業)・深夜労働の免除を請求できる権利が保障されましたが、このように法律の改正に伴う就業規則の変更は、従業員の同意なく進めることが可能です。

2.社会情勢の変化による変更

たとえば、配偶者手当・扶養手当の廃止が挙げられます。配偶者手当とは、配偶者が働いていない場合に給付される資金のことです。女性の社会進出が叫ばれておりますが、配偶者手当・扶養手当によって、配偶者が働く動機を阻害してしまう可能性があります。つまり配偶者手当・扶養手当は、社会情勢に合っておらず、「配偶者手当・扶養手当を撤廃する」という動きは合理的であるため、従業員の同意を得ずに就業規則を変更することが可能です。

3.就業形態の変化による変更

コロナ渦の在宅勤務への対応が例として挙げられます。具体的には、テレワーク環境の整備・不要な交通費支給のカット・電気代の手当・服装や労働時間などに関する就業規則の見直しなどが挙げられます

不利益変更になる場合の対応

合理的な就業規則の変更に同意は必要ないとお伝えしてきましたが、一方で従業員に対して不利益な変更になる場合は別途対応が必要になります。たとえば、「休日・休暇の日数を減らす」「手当を廃止する」といった、従業員の不利益になる就業規則の変更は「従業員の過半数を代表する者の意見を聴取して書面で提出し、変更理由に合理性があることを説明する」という手順を踏まないと適応されません。この手順は労働契約法第9条による変更ルールの一般原則で定められています。つまり、不利益変更を同意なく強行するのは非常に難しいのです。
 

就業規則における不利益変更の具体例とは?

休日・休暇の日数を減らしたり、手当を廃止したりする以外にも、不利益変更はあります。具体的には以下の例が挙げられます。

・労働時間の変更
・経営状況の悪化に伴う賞与の減額
・退職金の減額
・給与の減額
・休日出勤

不利益変更が可能となる3つの条件

そもそも不利益変更が可能となる条件についてはご存じでしょうか。この章では不利益変更に関する3つの条件を紹介します


・従業員が受ける不利益の程度
・不利益変更の必要性
・変更内容の相当性

上記の3つの条件を満たせていれば、不利益変更が認められる可能性があります。いずれの条件も、従業員に著しく不利益を与えたり、不当に不利益を与えたりすることを防ぐために満たす必要があるので、就業規則変更の際はかならず確認するようにしましょう。

不利益変更について、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
https://www.kisoku.pro/disadvantage-change/ 


就業規則を変更する5つの手順とは?

就業規則を変更する際の手順について解説します。労使トラブルを避けるためにも、ぜひ正しい手順で就業規則の変更を行いましょう。

就業規則の変更手順イメージ

1.就業規則の変更案の作成

まずは労働者代表の意見を聴きながら、就業規則の変更案を作成します。可能であれば、変更案の作成時点で社内説明会を開き、同意を得ておくことをおすすめします。もちろん、労働基準法などの法律に抵触しないかどうかも、法務担当者に確認しておきましょう。

2.就業規則変更届の作成

就業規則の変更案が固まったら、次に就業規則変更届を作成します。どの就業規則を、どのように変更したのかが分かりやすいように明記します。新旧対照表を作成すると、分かりやすいでしょう。労働省のWebサイトから、就業規則変更届の雛形をダウンロードして作成してください。

3.従業員代表者の意見書を作成

労働者の過半数を代表する者の意見書の作成も忘れずに行います。就業規則の変更に同意は必ずしも必要ありませんが、意見は必須のためです。不利益変更の場合は、この時点で就業規則の変更についての説明を行いましょう。最後に内容をまとめて、日付・代表者の署名捺印を入れます。

4.労働基準監督署へ提出

就業規則変更届・意見書・新しい就業規則が用意出来たら、労働基準監督署へ提出します。それぞれ2部ずつ用意して、1つは社内の控えとしておきましょう。提出は「遅滞なく」行う必要があり、具体的な期限はないですが1ヵ月以内を目安に提出するのが望ましいです。

5.社内への周知                                                                                     

最後に変更した就業規則を従業員に周知します。周知されていない就業規則は、効力が認められません。また労働基準法第120条で、就業規則の周知義務が定められており、周知しなかった場合、周知義務違反として30万円以下の罰金が科せられるリスクもあります。注意しましょう。

まとめ【就業規則の変更に同意は必要ない】

就業規則

就業規則の変更に従業員の同意は必要ありません。しかし、少なからず意見を聴く必要があり、変更にあたって意見書を作成・提出する必要があります。また不利益変更の場合は、同意が必要な事に加えて、不利益変更が可能になる条件もあります。不利益変更の際は、特に注意してください。

日本就業規則診断士協会では、就業規則の変更に納得して頂けるように、説明会を実施しています。説明会で内部の人間が話すだけでは、従業員は「経営側の私益のためなのでは」と疑念を持つ可能性もありますが、第三者である日本就業規則診断士協会が説明することで、従業員からの信頼を得られやすくなります。

さらに従業員の結束強化に役立つ、就業規則のコンサルティングも承っております。時流に合わせた就業規則の変更・会社としての結束を高める就業規則の作成は、ぜひ日本就業規則診断士協会にご相談ください。