問題社員への2つの対応方法とは?問題別の対応方法・解雇における注意点も解説!

「企業は人なり」と言われるように、社員の良し悪しによって会社は発展もしますし、またその逆もあります。社員は大事な資本であると同時に、経営者にとって悩みの種になることもあります。そこで今回は、悩みの種である“問題社員”が会社にもたらすリスクと、効果的な対応方法についてご紹介していきます。

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問題社員に対応すべき3つの理由

周りの社員が辞めてしまう

問題社員を相手にまともに関わると、時間を奪われるだけではなく精神も消耗します。経営者はそのような非効率で不利益な存在に対して“見て見ぬフリ”をすることもありますが、それでは何の解決にもなりません。度重なる遅刻や欠勤、職務怠慢など明らかに問題行動を取っているにも関わらずお咎めなしでは社内の公平性が失われ、他の社員のモチベーションが下がってしまい離職に至ることもあります。

従業員の応募が減るリスクがある

問題社員が自分の職場の悪い口コミを嫌がらせで書くケースがあります。そして、公開された悪い口コミを見て応募を躊躇する求職者が増え、結果として応募が減る可能性があります。また、問題社員の影響で辞めた社員が、「問題社員を放置していた」ことを口コミで書き、さらに評判が落ちる可能性もあります。

取引先との関係にも悪影響を及ぼす

問題社員の悪影響は社外へも及ぶことがあります。問題社員が取引先で問題行動を起こして契約を切られたり、不祥事を起こして公に社名が出てしまったりするなど、会社としての信用問題に関わるような事態を招くこともあります。

問題社員への2つの対応方法とは?解雇はできる?

一般的な対応方法

問題社員に対して、いきなり解雇のような強い対応ができるわけではありません。会社と従業員は雇用契約を結んでおり、その契約内容や法に抵触しないやり方で、段階を追って対応を強くしていくことが大事です。

一般的な流れとしては、

現状把握→対処方法の検討・提示→経過観察→改善がみられない場合は注意→懲戒→解雇

となります。

問題行動を起こしている社員であっても、そもそも雇用を決めたのは会社の判断なので、できることなら解雇をせずに改善させたいと願うかもしれません。しかしあらゆる手を尽くしても状況が改善されない場合は解雇となることもあるでしょう。その際は、「会社がきちんと指導をした」という記録が必要となってくるので、戒告などで記録を残しておきましょう。

懲戒規定に基づく対応方法

懲戒規定に照らして何らかの手を打つのは気が引けると思う方もいるでしょう。しかし、本来は戒告という形が公平な対応であり、客観的に注意をしたという記録も残ります。

最終的に懲戒解雇となった時でも、戒告したという記録を残しておけば、辞めてもらうときに会社がきちんと指導したという証拠にもなります。日本の会社には通念上教育義務があるので、一連の記録が会社として教育義務を果たしたという証拠にもなります。その中では、教育をしたけれど従業員が育たなかったと証明する必要があります。これが口頭による指導だと、誰がどのくらい時間をかけて注意したのかを問われた時に、誰も客観的に義務を果たしたことを証明できません。

さらに、懲戒規定に照らして戒告という重い形をとると、相手に対して「何やらマズいな」と思わせることができるので効果的です。会社として何も行動を起こさないと、問題社員も状況を軽くみてしまうため、言うべきところはしっかりと言って、問題行動に対しては戒告した方がよいです。

ただし、注意しなければならないのは、精神的に不安定であるなどメンタルになんらかの不調を抱えている社員です。そのような社員に対しての戒告は逆効果です。戒告が有効なのは、あくまで本人に改善したい気持ちがあるケースということも覚えておきましょう。

問題別!問題のある社員への5つの対応方法

ルールの無視

ルールの無視は、いつどのようなルールを破ったかという客観的なデータを集めて、なぜルールを破ったのかという理由を本人に聞いてみましょう。その上で、ルールを無視することによって生ずる弊害や、それが就業規則に反することなどをあらためて本人に認識させましょう。

対人関係でのトラブル

対人関係のトラブルも、まずは客観的なデータを集めるところから始めましょう。トラブルの原因がどちらか一方にあるということはないので、双方の言い分を聞いた上で、それぞれの問題点を指摘し、解決策をともに見つけていきましょう。もし、毎回同じ社員がトラブル起こすのであれば、上司や部署のメンバーとの相性も関係しているかもしれないので、異動などによって改善をはかりましょう。

能力不足

能力不足の場合は、社員への再教育で解決する場合があります。社内研修や外部研修などを受講させることで一定の効果はあるかもしれませんが、それでも改善されない場合はさらに状況を詳しく分析し、さらなる対応を考える必要があります。能力不足には、単純にスキルの不足とマネジメント能力の不足の両方がありますが、マネジメント能力の不足に関しては教育だけで改善されないかもしれません。本人の素養や向き/不向きなども関係してくるので、マネージャー職に就いている社員で明らかに能力不足とされる問題社員に関しては、降格なども考えましょう。

素行が悪い

素行の悪さは戒告したりしつこく注意したりするしかありません。そもそも会社における仕事の定義が何なのかということをきちんと認識させることが大事です。

挨拶をする、コミュニケーションを取るなどは当たり前のことなので、当たり前すぎてほとんどの場合ルール化されていません。しかし、ルールがないことをいいことに「売上だけ上がっていればいいんでしょ」と素行が悪い社員が出てきてしまいます。素行の悪さがエスカレートすると仕事にも支障をきたすので、当たり前のことなども含めて仕事の定義を決めておくと注意しやすいです。

例えば服務規律があると、素行が悪い社員に対して「風紀を乱している」と注意できます。

プログラマーの会社の中には挨拶がいらない会社もあるかもしれませんが、サービス業であれば当たり前のこともルール化しておくとよいでしょう。共通認識を何らかの形で作っておくことが大事です。

セクハラ・パワハラ

企業コンプライアンスが重視される昨今では、セクハラ・モラハラ社員に対して即時解雇の対応をとる会社が多いです。強く対応をとらないと他の社員が辞めてしまうからです。何れにしても、就業規則に関係なく法律でセクハラ・パワハラには厳重に対応することが求められています。(男女雇用機会均等法11条・育児介護休業法等11条)

セクハラ・モラハラは就業規則の記載に関わらず、法令違反となりますので、迷いなく注意しましょう。

問題社員への対応で解雇するときの2つの注意点とは

問題社員に対して再三注意をしても状況が改善されないときは、解雇を視野に入れる必要があります。ここでは問題社員を解雇するときの注意点をお伝えします。

客観的な証拠を用意する

社員の解雇では何よりも客観性が大事です。社員が起こしてきた問題行動と、それによって会社が受けた不利益や実害などを証拠とともに理論立てて説明する必要があります。決して相手の人間性や性格などを理由として挙げず、誰もが認めることができる客観的な証拠とともに解雇を進めましょう。

記録を残しておく

懲戒解雇の通達の場では、必ずやり取りの記録を残しましょう。解雇はデリケートな問題なので、無意識に発した一言が命取りになることもあります。後々、言った/言わないの問題にならないためにも面談時には録音などをして、一部始終の記録を取っておきましょう。

問題社員への対応には就業規則が必須!

問題社員へのスムーズな懲戒解雇には、就業規則があることが必須です。会社と社員を守るためにも、服務規律や懲戒など社内のルールを日頃から整備しておくことが大事です。

解雇は2種類あり、一つは「普通解雇」と言って罰以外で辞めるケースです。

協調性がない、病気になった、仕事ができなくてクビなど止むに止まれず解雇するような場合に普通解雇となります。

もう一つは「懲戒解雇」と言って罰として辞めさせるケースです。人が人に罰を与えられるのは裁判所だけですが、服務規律や懲戒などの社内ルールがあれば例外的に会社の判断で罰を与える、つまり懲戒解雇できます。

しかし、就業規則がない/不十分だと懲戒解雇ができません。

話し合いをして解雇だったり、戒告だったりはできますが、懲戒解雇はできません。懲戒解雇ができないと、横領した人に対しても退職金を払わないといけなくなる可能性もあります。

まとめ【問題社員への対応は就業規則から!】

問題のある社員を解雇する際に、そこでまた新たな問題が発生してしまうという事態は何としてでも避けたいですよね。就業規則は会社設立時に作成することが一般的ですが、万が一作成していない場合や形骸化していて機能していない場合もあるので、一度しっかりと内容を確認しておくとよいでしょう。会社に就業規則があることによって懲戒解雇に正当性を持たせることができ、誰の目から見ても納得のいく判断として問題社員を解雇することができます。

私たち日本就業規則診断士協会では、就業規則の作成に関する様々なサポートを行っています。クライアント企業様の理念やビジョンを共有し、就業規則の意味合いを一緒に考え、就業規則の言語化をお手伝いします。

大切な社員と会社を守るために、ぜひ就業規則を作成・見直しをしてみてはいかがでしょうか。