職場ハラスメント対策〜第4回マタニティハラスメント〜

マタニティハラスメント

マタニティハラスメントも職場における主要なハラスメントの一つです。
元々、事業主による「妊娠・出産」「育児休業・介護休業等の申出や取得等」を理由とする解雇等の不利益取扱いは、禁止されていました。

平成 29 年 1 月からは、妊娠・出産、育児休業等に関する上司・同僚による就業環境を害する行為を、従来の「不利益取扱い」と区別しています。
そして上記行為は、マタニティハラスメントに当たるとして、事業主は防止策を講じることが義務付けられています。

このハラスメントについては、妊産婦や育児を担う労働者以外の労働者への配慮も、非常に重要になるでしょう。
なぜなら、妊産婦や育児を担う労働者以外の労働者への配慮が怠られていた場合、彼らが業務過多等に陥り、妊産婦や育児労働者へのハラスメント発生につながる可能性が高まるためです。

Contents

1 マタニティハラスメントに関する基礎知識(第1回のおさらい)

定義

「職場」において行われる上司や同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業・介護休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されることをいいます。

用語解説

職場とは・・・

文字通り労働者が業務を遂行する場所です。出張先なども当然含まれます。
また業務時間外の宴会の場や、社員寮や通勤中などであっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当するとされています。
その判断については、職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意かといったことを考慮して、個別に行われます。

労働者とは・・・

雇用形態に関係なく、事業主が雇用する全ての労働者を指します。
なお派遣労働者については、派遣元のみならず、派遣先も、自ら雇用する労働者と同様の措置を講ずる必要があります。

なお「育児休業・介護休業等を申出・取得した『男女労働者』」とあるように、男性も含まれるということに注意してください。

2つのタイプのマタニティハラスメント

マタニティハラスメントは(1)制度などの利用への嫌がらせ型(2)状態への嫌がらせ型の2つに大別できます。

厚生労働省「職場におけるハラスメント対策マニュアル」より引用

2 マタニティハラスメント対策としての事業主と労働者の責務

マタニティハラスメントに限らず、何らかのハラスメント被害が起きた場合、次の4つの責任が生じる可能性があります。

  1. 事業主の安全配慮義務違反による損害賠償責任:安全配慮義務を履行しなかったという契約違反(債務不履行)としての損害賠償
  2. 使用者責任による企業の損害賠償:不法行為を行なった労働者を使用した責任としての損害賠償
  3. 労働者災害補償責任:実際は労働者災害保険から支払われることになりますが、労災認定されること自体が会社の社会的評判の低下に繋がります。
  4. 役員の損害賠償責任:会社法第423条と第429条の適用を受ける場合に、株式会社や従業員に損害賠償責任が生じる可能性があります。

上記4点の詳細については第2回職場におけるパワーハラスメントの項目をご覧ください。

以下では、マタニティハラスメントに限定された法令を解説します。

事業主の責務

義務

マタニティハラスメント防止措置を講ずる義務について

男女雇用機会均等法 第11条の3第1項 

  1. 事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

育児介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)第25条

  1. 事業主は、職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
  2. 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。


厚生労働省は、上記法律に関連して、事業主が講ずべき措置について次のような指針を出しています。

第2・3回で扱ったパワハラとセクハラ対策として講ずべき措置とほぼ同じ内容です。
マーカーを引いた箇所がマタハラ特有の表現となっています。

マタニティハラスメント防止に向けて事業主が雇用管理上講ずべき措置

  1. 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
    ⑴ 職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの内容(以下「ハラスメントの内容」という。)及び妊娠、出産等に関する否定的な言動が職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの発生の原因や背景となり得ること(以下「ハラスメントの背景等」という。)、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントがあってはならない旨の方針(以下「事業主の方針)
  2. ⑵ マタニティハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
  3. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
    ⑶ 相談窓口をあらかじめ定めること。
    ⑷ 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること。
  4. 職場におけるマタニティハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
    ⑸ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
    ⑹ 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
    ⑺ 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
    ⑻ 再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)
  5. 1から3までの措置と併せて講ずべき措置
    ⑼ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
    ⑽ 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

上記「1事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」にあるように、事業主がマタニティハラスメントを許さない旨を明確にすることが重要です。
事業のトップが、マタハラ対策の業務における優先度の高さを示すことで、発生防止体制の構築に労働者も積極的に取り組めます。
事業のトップによる方針の発信がなければ、労働者にとっての業務優先度が上がらず、発生防止体制の構築はあまり進まないでしょう。

なおこのマタニティハラスメント防止の措置義務に違反した会社は、厚生労働大臣から報告を求められ、助言、指導もしくは勧告されます(育児介護休業法第56条)。
さらに勧告にも応じない場合は、企業名公表の対象となります(育児介護休業法第56条の2)。

努力義務

男女雇用機会均等法 第11条第3項
事業主は、他の事業主から当該事業主の講ずる第一項の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない。

男女雇用機会均等法 第11条の4第2項 
事業主は、妊娠・出産等関係言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない

男女雇用機会均等法 第11条の4第3項
事業主は、妊娠・出産等関係言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない

労働者の責務

男女雇用機会均等法 第11条の4第4項
労働者は、妊娠・出産等関係言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。

物理的な対策を講じた上で、マタニティハラスメント発生防止に向けた周知啓発活動を行う中で、この条文を根拠に労働者自身に継続的な自省を求めても良いでしょう。

 婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益扱いの禁止について

繰り返しになりますが、事業主による、婚姻、妊娠、出産等を理由とする労働者への不利益取扱いは、元々禁止されていて、マタハラと区別されます。
次の条文の主語が全て「事業主」であることに注意してください。

男女雇用機会均等法第9条(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)

  1. 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
  2. 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
  3. 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
  4. 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。

妊娠・出産したこと、育児や介護のための制度を利用したこと等を理由として、事業主が行う解雇、減給、降格、不利益な配置転換、契約を更新しないといった行為が、「不利益取扱い」となります。
不利益取扱いに該当すれば、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法違反となります。

平成27年1月に男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法の解釈通達が改正されました。
内容は、妊娠・出産、育児休業等を「契機として」なされた不利益取扱いは、原則として違法と解されることを明確化するものです。

この「契機として」の解釈について、厚生労働省はQ&Aにおいて次のように回答しています。

原則として、妊娠・出産・育休等の事由の終了から1年以内に不利益取扱いがなされた場合は「契機として」いると判断する。
ただし、事由の終了から1年を超えている場合であっても、実施時期が事前に決まっている、又は、ある程度定期的になされる措置(人事異動(不利益な配置変更等)、人事考課(不利益な評価や降格等)、雇止め(契約更新がされない)など)については、事由の終了後の最初のタイミングまでの間に不利益取扱いがなされた場合は「契機として」いると判断する。

厚生労働省「妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取扱いに係るQ&A」より引用

4 マタニティハラスメントに該当するか否かの判断基準について

マタニティハラスメントに当たるか否かの判断においては、次の2点の事実確認が重要です。

  1. 労働者の就業環境が害されれているか?
  2. 業務上必要な言動か?

「業務上必要な言動」は、労働者の意向を無視し続けない限りは、ハラスメントに該当しないでしょう。
例えば制度利用を希望する労働者に対して、業務上の必要性により変更の依頼や相談が行われることは、業務運営上当然あり得ます。
つまり、行われた言動が、相手の意思を尊重していて、しかも業務上必要なものであればマタハラには該当しません。

制度等の利用への嫌がらせ型

どの制度が対象になるのか?

下記制度又は措置(制度等)の利用に関する言動により就業環境が害されるものが、「制度などの利用への嫌がらせ型」に該当します。

厚生労働省 「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!」より引用

制度等の利用への嫌がらせ型の具体例

⑴ 解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの

・産前休業の取得を上司に相談したところ、「休みをとるなら辞めてもらう」と言われた。

・時間外労働の免除について上司に相談したところ、「次の査定の際は昇進しないと思え」と言われた。

⑵ 制度等の利用の請求等又は制度等の利用を阻害するもの

・育児休業の取得について上司に相談したところ、「男のくせに育児休業をとるなんてあり得ない」と言われ、取得をあきらめざるを得ない状況になっている。

・介護休業について請求する旨を周囲に伝えたところ、同僚から「自分なら請求しない。あなたもそうすべき。」と言われた。「でも自分は請求したい」と再度伝えたが、再度同様の発言をされ、取得をあきらめざるを得ない状況に追い込まれた。

⑶ 制度等を利用したことにより嫌がらせ等をするもの

・上司・同僚が「所定外労働の制限をしている人はたいした仕事はさせられない」と繰り返し又は継続的に言い、専ら雑務のみさせられる状況となっており、就業する上で看過できない程度の支障が生じている(意に反することを明示した場合に、さらに行われる言動も含む)。

・上司・同僚が「自分だけ短時間勤務をしているなんて周りを考えていない。迷惑だ。」と繰り返し又は継続的に言い、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている(意に反することを明示した場合に、さらに行われる言動も含む)。

厚生労働省 「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!」より引用

状態への嫌がらせ型

どの状態が対象になるのか?

次の状態にある労働者への嫌がらせが、マタニティハラスメントに該当します。

① 妊娠したこと
② 出産したこと
③ 産後の就業制限の規定により就業できず、又は産後休業をしたこと。
④ 妊娠又は出産に起因する症状により労務の提供ができないこと若しくはできなかったこと又は労働能率が低下したこと。
※「妊娠又は出産に起因する症状」とは、つわり、妊娠悪阻(にんしんおそ)、切迫流産、出産後の回復不全等、妊娠又は出産をしたことに起因して妊産婦に生じる症状をいいます。
⑤ 坑内業務の就業制限若しくは危険有害業務の就業制限の規定により業務に就くことができないこと又はこれらの業務に従事しなかったこと

厚生労働省 「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!」より引用

状態への嫌がらせ型の具体例

⑴ 解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの

・上司に妊娠を報告したところ「他の人を雇うので早めに辞めてもらうしかない」と言われた。

⑵ 妊娠等したことにより嫌がらせ等をするもの

・上司・同僚が「妊婦はいつ休むかわからないから仕事は任せられない」と繰り返し又は継続的に言い、仕事をさせない状況となっており、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている(意に反することを明示した場合にさらに行われる言動も含む)。

・上司・同僚が「妊娠するなら忙しい時期を避けるべきだった」と繰り返し又は継続的に言い、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている(意に反することを明示した場合にさらに行われる言動も含む)。

厚生労働省 「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!」より引用

5 マタニティハラスメントが認められた判例

マタニティハラスメントに関する判例はまだ少ないのが実状です。
ここでは2つの判例について紹介します。

ツクイ事件 福岡地判 平成28年4月19日

事件概要

介護職員として勤務してた労働者A(原告)は、営業所長である上司に妊娠の報告をした上で、業務軽減を求めた。
当該上司は、妊婦として可能な業務が何かについて労働者Aと話し合う中で、原告の勤務態度について叱責し改善を求めました。
そして当該上司は、
「万が一何かあっても自分は働きますちゅう覚悟があるのか、最悪ね。だって働くちゅう以上、そのリスクが伴うんやけえ」
「別に私、妊婦として扱うつもりないんですよ」
などと発言した。
妊婦として可能な業務を再度医師に確認するよう指示する一方で、業務の軽減を行わなかった。

その3ヶ月後になって労働者Aは、会社の本部長に対し業務の軽減を要望し,業務が軽減された。
労働者Aは、出産および育児休暇を取得後、マタニティハラスメント等があったとして、会社および営業所長である上司に対し慰謝料500万円などの支払いを求めた。

判決について

この事件は改正雇用機会均等法施行前ですが、営業所長である上司の不法行為と、会社の就業環境整備義務違反が認定されました。
営業所長の当初の言動もあり、その後3ヶ月もの間、労働者Aは就業環境の配慮を改めて求めていませんでした。

それでも判決では、会社は配慮の要否を当該労働者Aに積極的に確認する必要があったと認定しています。
改正雇用機会均等法が施行された今、厚生労働省の指針に沿ってマタニティハラスメントを許さない姿勢を就業規則に明記しなければいけません。

妊産婦が働きやすい環境を積極的に整備していくことも求められます。
なお営業所長の上記発言に対して、判決では下記のように述べています。太字は筆者による

「・・・妊娠をした者(原告)に対する業務軽減の内容を定めようとする 機会において、業務態度等における問題点を指摘し、これを改める意識があるかを強く問う姿勢に終始しており、受け手(原告)に対し、妊娠していることを理由にすることなく、 従前以上に勤務に精励するよう求めているとの印象、ひいては、妊娠していることについての業務軽減等の要望をすることは許されないとの認識を与えかねないもので、相当性を欠き、また、速やかに原告のできる業務とできない業務を区分して、その業務の軽減を図るとの目的からしても、配慮不足の点を否定することはできず、全体として社会通念上許容される範囲を超えているものであって、使用者側の立場にある者として妊産婦労働者(原 告)の人格権を害するものといわざるを得ない。

医療法人稲門会事件 大阪高判 平成26年7月18日

事件の概要

病院で勤務していた男性看護師(原告)が、3ヶ月間の育児休業を取得した。
病院側は3ヶ月間の不就労を理由に、職能給を昇給させず、昇格試験も受験させなかった。
男性看護師は、これら病院側の行為を違法だとして、

①昇給・昇格していれば支給されたであろう給与等の金額から既に支払いを受けた給与額を差し引いた額
②慰謝料

を病院側に損害賠償請求した。

判決について

昇給させなかったことについて

病院の就業規則では、3ヶ月以上の育児休業を取得した労働者は、翌年度の昇給対象から外れると記載されていました。
しかし遅刻、私傷病以外の欠勤、休暇、休業などは、昇給の欠格要件には含まれていませんでした。
この差のある取り扱いについて判例では下記のように述べ、昇給させなかったことを違法と判断しました。(太字化は筆者による)

「本件不昇給規定は、1年のうち4分の1にすぎない3か月の育児休業により、他の9か月の就労状況いかんにかかわらず、職能給を昇給させないというものであり、休業期間を超える期間を職能給昇給の審査対象から除外し、休業期間中の不就労の限度を超えて育児休業者に不利益を課すものであるところ、育児休業を私傷病以外の他の欠勤、休暇、休業の取扱いよりも合理的理由なく不利益に取り扱うものである。育児休業についてのこのような取扱いは、人事評価制度の在り方に照らしても合理性を欠くものであるし、育児休業を取得する者に無視できない経済的不利益を与えるものであって、育児休業の取得を抑制する働きをするものであるから、育児介護休業法10条に禁止する不利益取扱いに当たり、かつ、同法が労働者に保障した育児休業取得の権利を抑制し、ひいては同法が労働者に保障した趣旨を実質的に失わせるものであるといわざるを得ず、公序に反し、無効というべきである」

昇格試験を受けさせなかったことについて

病院の規則に照らしても、原告は昇格試験の受験資格を得ていました。
したがって当該病院の行為は、違法と判断されました。

 マタニティハラスメントを起こさせないために

事業主や管理職が権力を武器に、マタニティハラスメント行為に及ぶ事例もあります。

一方で、労働者同士の間においても、マタニティハラスメントにあたる行為が行われる可能性があります。
特に、産休・育休を取得する労働者以外の労働者に業務の負担が重くなり、しかもその残された労働者の業務負担増への会社の配慮がない場合には、労働者間でマタニティハラスメントが行われる可能性が高まります。

産休・育休を取得する労働者以外の労働者の業務負担増とならないように、事業主が対策を講ずることは重要です。
一時的に人を雇うといった方法だけでなく、デジタル化を通じた業務の効率化など色々と方策は考えられます。

一方で、産休・育休を取得する労働者にも、引き継ぎを丁寧に行うなどの周りへの配慮が求められることもあるでしょう。
また、業務に影響が出るような私的な事情があれば、管理職への報告・連絡・相談が迅速に行われるべきでしょう。

関連就業規則解説

第3章 服務規律 第14条 妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントの禁止

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